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2020年11月19日

小岩広宣社労士の「人材サービスと労務の視点」47・令和3年度の一般賃金②

Q 令和3年度の局長通達による一般賃金の水準は概ね前年度よりも上がっているものの、下がっている職種や地域もあると聞きました。具体的にはどうなのでしょうか。

koiwa.png 10月21日に公表された局長通達では、令和3年度の一般賃金の水準が公開されています。一般賃金は賃金構造基本統計調査と職業安定業務統計を基準に水準が設定されていますが、いずれも2年前の統計が基準とされ、令和2年度の一般賃金は平成30年度の数値、令和3年度は令和元年度の数値が使われています。

 2年前の令和元年はまさに人手不足で好景気の真っただ中で、東京オリンピックを控えた高揚感に包まれた時期だったため、コロナ禍と景気の停滞による影響が雇用を直撃した令和2年の実態とは、現場の景況感からするとかなり乖離した数字だといえるかもしれません。そのため令和3年度の局長通達では、前回ご紹介したような「例外的取扱い」が置かれることになりました。

 ところが、令和3年度の一般賃金はすべての職種・地域で令和2年度よりも上昇しているわけではなく、前年度よりも下がっているものもあります。具体的には、職業安定業務統計の場合、会社役員、電気・電子開発技術者等、自動車開発技術者、医師・薬剤師等、小売店主・店長、卸売店主・店長などの職種では、前年よりも水準が下がっています。地域指数についても同様であり、多くの地域では令和2年より上昇していますが、神奈川県、愛知県、三重県、大阪府などでは前年よりも下がっています。

 令和3年度の労使協定の締結にあたっては例外的取り扱いを適用する例も多いと思いますが、上記のように一般賃金そのものが下がる職種や地域もあるため、まずはこの点をチェックしてから実務を進めるのが効率的だといえます。もちろん、賃金水準については労働者に有利に設定することは何の問題もありませんが、一般賃金の適用の仕組みを正確に理解することは労使双方にとって有益だといえるでしょう。


(小岩 広宣/社会保険労務士法人ナデック 代表社員)

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