コラム記事一覧へ

2021年1月21日

小岩広宣社労士の「人材サービスと労務の視点」55・令和2年12月4日版労使協定イメージ①

Q 昨年12月4日に労使協定方式に関する新しい労使協定イメージが公表されました。具体的にはどのような点が新しくなったのでしょうか。

koiwa1.png 厚生労働省から令和2年12月4日付で「労働者派遣法第30条の4第1項の規定に基づく労使協定(イメージ)」が公表されました。同年1月14日に公表された第一弾に続くものであり、10月21日に公開された令和3年度の局長通達の内容を受けて、条項が追加・修正されています。年の瀬の繁忙期に公開されたので詳細を確認できていない人もいるかもしれませんが、これからの労使協定の実務には欠かせない内容ですので、とりわけ派遣元事業所には精読していただきたいものです。令和2年12月4日版で示されたポイントは、以下の通りです。

①基本給・賞与等について能力・経験調整指数の適用にあたっては、一般基本給・賞与等の額が客観的に明らかになる記載が必要であり、単に「一般基本給・賞与等の額と同等以上にする」とのみ記載したり、別表として局長通達の別添1や別添2をそのまま添付することなどは、対応関係が明らかでないため問題となり得る。  
②退職金については就業規則・退職金規程等で退職金の額が客観的に明らかとなるように記載されていることが必要であり、労使協定に「対象従業員の退職金は、別途定める退職金規程による」といった記載のみの場合は、対象従業員の退職金の額が客観的に明らかでないため、退職金制度を適用しているものとは認められず、原則として退職金の前払い(6%)を適用しているものとみなされる。  
③労使協定方式は派遣労働者の段階的・体系的なキャリアアップ支援などの派遣労働者の長期的なキャリア形成に配慮した雇用管理を行うことを目的としているため、有効期間の終了後に締結する労使協定についても、労使協定に定める協定対象派遣労働者の賃金の額を基礎として、労使で協定対象派遣労働者の公正な待遇の確保について誠実に協議することが求められる。

 これらの点は必ずしも令和3年度のみの変更点ではありませんが、実務的にも大切な論点ばかりです。都道府県労働局では派遣元事業所から事業報告書に添付して提出された労使協定の実態確認などの調査・点検を進めていますが、その中でも能力・経験調整指数について局長通達の別添がそのまま添付されているだけで具体的な金額との対応関係が明らかでなかったり、退職金制度の適用をうたいながら具体的な就業規則(退職金規程)の根拠がなかったりするような例が散見されるようです。令和3年度の労使協定の締結・更新にあたっては、十分に留意したいものです。


(小岩 広宣/社会保険労務士法人ナデック 代表社員)

PAGETOP