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2021年3月 4日

小岩広宣社労士の「人材サービスと労務の視点」61・派遣法省令・指針の改正⑤

Q 令和3年の派遣法省令改正のうち、4月から施行される雇用安定措置に係る派遣労働者の希望の聴取等とは、具体的にはどのような内容ですか。

koiwa1.png 派遣元事業主には、派遣就業見込みが3年あり、継続就業を希望する有期雇用派遣労働者について、①派遣先への直接雇用の依頼、②新たな派遣先の提供(能力、経験等に照らして合理的なものに限る)、③派遣元での無期雇用、④その他安定した雇用の継続を図るための措置(有給の教育訓練、紹介予定派遣など)のいずれかを実施することが義務付けられており(派遣法30条)、このことを「雇用安定措置」といいます。派遣元が雇用安定措置を確実に履行するためには、派遣労働者の現状やニーズを十分に把握する必要があることから、派遣労働者の希望を正確に聴くことが求められます。

 ところが、令和2年7月の「労働者派遣制度に関する議論の中間整理」では、「雇用安定措置について派遣元事業主から相談を受けていないと回答した派遣労働者が約半数あり、希望に応じた措置という点では、課題が見られた」という問題点が指摘されました。そこで令和3年4月施行の改正省令では、派遣元が雇用安定措置を講ずるにあたって派遣労働者の希望を聴取し、その結果を派遣元管理台帳に記載することが義務付けられます。

 派遣元管理台帳には「雇用安定措置の内容」(実施内容、日付、実施結果)を記載することが義務とされていますが、今後はこれに加えて、「派遣労働者の希望の聴取結果」を記載しなければなりません。具体的には、「派遣労働者が希望する措置内容」と「希望を聴取した日付」を記載することになります。

 すべての派遣労働者に面談して聴取することは現実的ではないため、書面で派遣労働者の希望(①~④)を聴取するか、メールや社内システムなどによって意思を確認することになるでしょう。派遣元管理台帳は労働局の定期調査などでも重点項目されますので、確実な希望聴取と派遣元管理台帳に万全を期したいものです。

参考:「新型コロナウイルス感染症にかかる派遣労働者の雇用維持のための積極的な対応をお願いします」


(小岩 広宣/社会保険労務士法人ナデック 代表社員)

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