コラム記事一覧へ

2021年7月27日

【ブック&コラム】オリンピックの陰で起きたこと

 オリンピック・パラリンピックのような国家的事業で社会が沸き返っている時期は、それ以外に何が起きているかわからないことが多い。とりわけ、普段は目に触れない経済事象はそうで、後になって「あの時は、そうだったのか」と思わせる。57年前の1964年10月に開かれた東京オリンピックもまさにそうだった。

c210727_2.jpg

1964年東京オリンピック開会式
(東京都提供)

 当時は高度成長期の真っ最中で、とりわけ五輪前からの1年間、日本経済は「オリンピック景気」に沸いた。しかし、開幕前からその反動が押し寄せており、まさに開催期間中に景気はピークアウト。翌65年にかけて日本特殊鋼などの大型倒産が相次ぎ、極め付きが同年5月の山一証券などの破綻と日銀特融事件だった。世に言う「証券不況」に五輪の余韻はすっかり冷めてしまい、政府や日銀は対策に追いまくられた。

 今回の五輪と比べるため、メディアでは当時の五輪がよく引き合いに出されるが、そんな大状況の中で「戦後復興の五輪」が開かれたことに言及する論調はほとんどみられない。歴史の彼方に忘れられているようだ。しかし、この時に戦後初の赤字国債2000億円が発行され、それが1000兆円を超える現在の発行残高につながっている点は忘れるべきではない。

 おそらく、今回の五輪は新型コロナとセットになって後世に語り継がれるだろう。今のところ、当時のような経済危機を感じさせる指標は見当たらない。日本経済は当時の"子供"から体格も体力もケタ違いに大きな"大人"になっており、おそらく五輪の反動不況といった事態にはなるまい。それはそれで結構なことだが、当時の五輪熱が過剰だったのに対して、今回の五輪熱の低さは際立っている。それはそのまま経済成長の度合いに比例しているよう思えてならないが、選手のメダル争いは別物だ。当時と変わらないドキドキを覚えてしまう。(俊)

PAGETOP