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2021年9月16日

小岩広宣社労士の「人材サービスと労務の視点」89・労使協定の有効期間の更新

Q 令和4年度の一般賃金の局長通知が公表されたので、来年度に向けて労使協定を更新しようと思います。当社の労使協定の有効期間は令和5年3月末までの3年間となっているのですが、どのように対応すべきでしょうか。

koiwa1.png 派遣法の労使協定方式を採用する場合の労使協定には有効期間の定めをし、協定に記載する必要があります。ただし、この期間については特に決められていないため、毎年の労使協定締結の実務が大変だと考える場合は、比較的長期間の有効期間を設定することもあります。この期間は、3年や5年、10年であっても構いません。

 しかし、当然のことながら、労使協定の内容は局長通知に定める基準を満たしている必要があります。連載85回でも触れたように、令和4年度の局長通知で示された一般賃金の水準は更新されており、能力・経験調整指数や通勤手当、退職金水準なども変更されているため、一般的には労使協定の内容を見直す必要が出てきます。労使協定の有効期間が令和4年4月よりも長い場合は、実務的には有効期間の中途で締結しなおすことになります。業務取扱要領には、以下のように記載されています。

 労使協定の有効期間中に一般賃金の額が変更された場合には、有効期間中であっても、労使協定に定める派遣労働者の賃金額が一般賃金の額と同等以上の額であるか否かを確認すること。派遣労働者の賃金額が一般賃金の額と同等以上の額でない場合には、労使協定に定める賃金の決定方法を変更するために労使協定を締結し直す必要があること。一方、派遣労働者の賃金額が一般賃金の額と同等以上の額である場合には、派遣元事業主は、同等以上の額であることを確認した旨の書面を労使協定に添付すること。(「労働者派遣事業関係業務取扱要領」令和3年4月1日以降版、P181)

 派遣元は局長通知の更新によって派遣労働者の賃金が一般賃金を下回る場合には、一般賃金と同等以上の水準にするために労使協定を締結しなおす必要があり、一般賃金と同等以上の額であることを確認した旨の書面を労使協定に添付する必要があります。このような点からすると、実務的には毎年局長通知にしたがって労使協定の内容を見直す必要があることから、労使協定の有効期間は1年にしておいたほうが現実的だといえるでしょう。

 局長通知は毎年6~7月に公表され、翌年4月から新たな一般賃金が適用されることから、有効期間は4月から翌年3月までの1年間としている例が多いと思います。現協定の有効期間が3年間となっており、その期中に新たな協定を締結する場合は、新協定の有効期間を新たに1年間に設定するのが妥当かもしれません。


(小岩 広宣/社会保険労務士法人ナデック 代表社員)

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