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2021年10月 7日

小岩広宣社労士の「人材サービスと労務の視点」92・派遣事業の適正化のための自主点検表①

Q 事業所に「派遣事業の適正化のための自主点検表」が届きました。どのように対応したらよいですか。

koiwa1.png 9月中旬から、「労働者派遣事業の適正化推進のための自主点検(セルフチェック)」が始まっています。具体的には、「令和3年度労働者派遣事業者の適正化推進事業」を受託した公益社団法人全国労働基準関係団体連合会(全基連)により実施され、すべての派遣事業者に郵送で「自主点検表」が配布されています。例年は都道府県労働局による行政指導などが実施されていますが、長期化するコロナ禍の状況を受けて今回は事業所の「自主点検」方式が採用されています。

 自主点検表が郵送で届いたら32項目ある自主点検項目の当てはまる番号の□にチェックを入れていき、「派遣事業適正化自主点検特設サイト」のフォームで回答します。回答フォームでは、事業所名称、所在地、従業員数、相談・個別訪問支援の希望の有無が必須項目となっています。点検表は紙ベースで届きますが回答はインターネットを介して行う点に注意しましょう。

 点検項目のチェックが終わったら、改善すべき点がないかを確認します。点検表では、それぞれの点検項目について「〇〇と回答した場合は改善が必要です」というコメントが付けられており、改善が必要な回答結果がすぐに分かるようになっています。例えば「(2)派遣労働者の選定」の項目では、「⑤本人の希望による」と「⑥派遣労働者の選定は派遣元が行う」以外をチェックした場合はすべて改善が必要となります。その場合は、点検表の8頁以降の「自主点検項目の解説」をしっかりと確認したいものです。

 自主点検後の改善への取り組みにあたっては、派遣事業の実務に詳しい社労士などが相談に応じたり、コンサルティングを行う支援事業が実施されます。電話やメールで対応する相談支援と相談員が事業所に訪問する個別訪問支援(オンラインにも対応)がありますが、いずれも無料ですので必要に応じて気軽に活用したいものです。

 なお、点検結果を回答したことによって労働局から指導を受けたり、不利益な処分
を受けることを心配する人もいるかもしれませんが、点検結果については統計処理された集計データ以外は使用せず、事業所を特定するような使用は行わないとされ、相談・個別訪問支援で得られた情報も、支援以外の目的で使用したり、他の関係機関、第三者に提供することはないとされています。

 自主点検表によるセルフチェックは、全基連によって運営される厚労省の委託事業であり、あくまで自主的な点検・回答が求められるものですが、基本的には速やかに点検・回答することが望ましいものです。自主点検項目については、それぞれの項目ごとに詳しい解説も準備されていますので、これらも参考にしつつ全体を理解した上でチェック・改善を進めていきたいものです。

派遣事業適正化自主点検特設サイト

派遣事業者の適正化推進事業


(小岩 広宣/社会保険労務士法人ナデック 代表社員)

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