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2022年2月17日

小岩広宣社労士の「人材サービスと労務の視点」110・子どものコロナワクチン接種にあたっての対応

Q 従業員の子どもが新型コロナウイルスワクチンを接種する場合の会社の対応について、注意すべきことはありますか。

koiwa1.png 新型コロナウイルスの感染拡大が続き、子どもが感染する例も見受けられますが、5~11歳の子どもを対象としたワクチン接種を厚生労働省が承認したことから、3月以降に接種が本格化していくといわれています。この点について、1月31日に「新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)」の問いが追加されています。「4労働者を休ませる場合の措置(休業手当、特別休暇など)」の「問21・5~11歳の子どもを対象とした新型コロナワクチンの接種が開始されます。ワクチン接種の対象年齢の子どもを持つ、自社の労働者への対応については、どうしたらよいでしょうか」では、「ワクチン接種には原則として保護者の同伴が必要とされています。また、接種後の副反応等で子どもが体調を崩した場合の看病などで労働者が急に仕事を休まざるを得ない場合も生じ得ます」とした上で、「子どもへのワクチン接種を希望される労働者が安心してワクチン接種に臨めるよう、企業においても、労働者の希望や意向も踏まえて必要な取り組みを進めていただくことが望まれます」と喚起しています。

 子どものワクチン接種に保護者として同伴し、あるいは副反応などの看病をする労働者が休暇などを取得するにあたっては、事業主が十分な理解と対応を取ることが必要となりますが、具体的な対応については、子どもの年齢によって内容が変わるケースがあります。小学校に入学する前の未就学児については、育児介護休業法に基づく子の看護休暇を申し出ることができます(16条の2)。予防接種も看護休暇の対象となりますので、年間5労働日を限度として1日または時間単位で休暇を取得することができます。このような制度について労働者に十分周知するとともに、すでに法定日数を取得している労働者についても柔軟な対応が求められるでしょう。

 小学校入学後の子どもについては、Q&Aでも触れられているように、「ファミリーサポート休暇」や「失効年休積立制度」などを活用したり、創設することが考えられます。「ファミリーサポート休暇」は、育児や介護など家族へのサポートが必要な労働者に法定休暇である年次有給休暇や育児休業以外の休暇を与える制度であり、労働者本人や家族の誕生日などに休暇が取得できる制度なども含まれます。

 「失効年休積立制度」とは、失効した年次有給休暇を積み立てて、病気の療養や育児、介護などの場合に取得できる制度であり、全体の2割を超える企業が導入しているといわれます(働き方・休み方改善ポータルサイト)。「ファミリーサポート休暇」と「失効年休積立制度」は、労働者が必要なときに休暇を取得するのを会社が後押しするという趣旨は同じですが、制度上の位置づけや実際の運用には異なる点があります。

 「ファミリーサポート休暇」は会社の任意・独自の制度として就業規則などで規定して自由に運用することができますが、「失効年休積立制度」はあくまで年次有給休暇のうちの失効分を独自の制度によって積立・保存する仕組みであるため、法定の年次有給休暇の性格が温存される点には注意する必要があります。

 具体的には、法定年休と積立分のどちらを優先して消化するかや、休暇請求時の社内における手続き、休暇中の賃金の計算方法などの点について、会社が定めた規定に準拠する必要があります。多様な休暇制度を並行して創設・運用することは職場の活性化や人材定着のためにも有益ですので、見直しや検討する機会も大切にしていきたいものです。

(小岩 広宣/社会保険労務士法人ナデック 代表社員)

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