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2022年3月10日

小岩広宣社労士の「人材サービスと労務の視点」113・キャリアアップ助成金の令和4年改正

Q 今年、キャリアアップ助成金の要件が改正されると聞きました。具体的にはどのような点が変更されるのでしょうか。

koiwa1.png キャリアアップ助成金について、令和4年4月1日以降の改正点が厚生労働省から公表されました。2月22日に公表されたリーフレットによると、派遣労働者も含めて活用される例が多い正社員化コースでは、以下の点が変更されます。

(1)有期雇用労働者から無期雇用労働者への転換の助成の廃止

現行 変更後
①有期→正規 1人あたり57万円
②有期→無期 1人あたり28万5千円(廃止)
③無期→正規 1人あたり28万5千円
①有期→正規 1人あたり57万円
②無期→正規 1人あたり28万5千円

(2)「正社員」の定義の変更(障害者正社員化コースも含む)

現行 改正後
同一の事業所内の正社員に適用される就業規則が適用されている労働者 同一の事業所内の正社員に適用される就業規則が適用されている労働者
             +
「賞与または退職金の制度」かつ「昇給」が適用されている者に限る

(3)非正規雇用労働者の定義の変更(障害者正社員化コースも含む)

現行 改正後
6か月以上雇用している有期または無期雇用労働者 賃金の額または計算方法が「正社員と異なる雇用区分の就業規則等」の適用を6か月以上受けて雇用している有期または無期雇用労働者


 正社員化コースは派遣先が派遣労働者を正社員として直接雇用した場合の加算があり、人材開発支援助成金(派遣事業主活用型)とも併給できることから、派遣先と派遣元が連携して紹介予定派遣の場面で活用される事例も少なくありませんが、今後は(2)の要件の変更によって事実上のハードルが上がることになりそうです。従来は直接雇用後の雇用形態について就業規則上の位置づけが「正社員」であれば対象となりましたが、改正後は賞与・退職金制度に加えて昇給制度が運用されていることが要件となります。

 派遣労働者の待遇決定方式のうち、労使協定方式については賞与・退職金やキャリアアップの場合の昇給(追加の手当など)が実施されていますが、今後は紹介予定派遣などで正社員への直接雇用をはかってキャリアアップ助成金を活用する場面でも、同様の厳格な建てつけが求められると理解できるかもしれません。キャリアアップ助成金は、派遣労働者についての要件はとりわけ複雑な制度となっていますが、今回の改正点の具体的な内容は今後随時公表されますので、助成金を検討する場合は常に最新情報を確認していきたいものです。


(小岩 広宣/社会保険労務士法人ナデック 代表社員)

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