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2022年5月 3日

【ブック&コラム】『自己肯定感という呪縛』

褒めて育てる"底の浅さ"を指摘

c2202_1.jpg著者・榎本博明
青春出版社、定価1012円(税込)


 心理学の専門家である著者は、「自己肯定感を高めないといけない」とする社会風潮を信仰のような強い思い込みだと疑い、教育および人材育成の現場に警鐘を鳴らす。

 特に、子供時代に根拠なく褒められて育った人は、大人になって心が折れやすく、忍耐力が乏しくなっていると問題視する。さらに、叱られた経験がないと社会性を獲得できず、衝動をコントロールする力も、困難を乗り越えていくたくましさも身につかないと分析。対して有能な人は「こんな自分じゃダメだ」「自分はまだまだです」と謙虚に向上心を燃やし続け、成長していると観察する。この2つのモデルからは、厳しく叱られても期待感が伝わればそれに応えようと成長を目指せるが、ただ「いいね」と褒められるだけでは「成長しなくていい」というメッセージに受け止めかねないと相違点を見出している。

 確かに「オレ・ワタシすごいでしょ」ではレベルが浅く、「本当にこれでいいのか」「相手はどう思うか」と不安になるくらいの人ほど能力開発に成功しているとの指摘には納得がいく。


(久島豊樹/HRM Magazine より)

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