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2022年10月 4日

【ブック&コラム】「タイパ」にみる危うさ

 最近、ある新聞に「現代ポップスのイントロが短くなっている」という記事が出ていた。イントロなしで、いきなり歌が始まる曲も増殖中という。その理由がまた、いかにも現代的というか、世知辛いというか。

c221004.png 要するに、歌い出しなどの部分をすっ飛ばして、"本体"だけを楽しむ「タイパ」重視の流れの一環だという。この「タイパ」というのが「タイム・パフォーマンス」の略で、「コスト・パフォーマンス(費用対効果)」→「コスパ」と同じ省略法。さしずめ「時間対効果」というか、「ムダな時間は省く」という意味になる。

 映画の筋だけをピックアップして短時間に編集する「ファスト映画」が問題になっているが、これなどは「タイパ」の悪用例。大学の授業がオンラインになって、先生の講義の眠たい部分(失礼!)は早送りするのも普通だという。「時は金なり」。余計な時間を使いたくないとばかりに、先へ先へと急ぐ現代人の性急さがのぞく。

 しかし、いくら先を急いでも結論の出ない話など、世の中にいくらでもある。いや、その方が多いと言ってもいい。短時間で終わる歌や映画と、人生は違うんですよ。ちなみに、懐メロポップスの名曲で、リバイバル中の「君は天然色」(大瀧詠一)のイントロを計ってみたら50秒(!)もあった。ここをすっ飛ばして歌おうとしても、多くの人は最初からつまずくこと請け合いです。カラオケでお試しを。(俊)

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