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2023年2月 2日

小岩広宣社労士の「人材サービスと労務の視点」160・シフト制で働く労働者の雇用管理を適切に行うための留意事項

Q シフト制によって勤務するアルバイトやパートタイム労働者の労務管理について、基本的な留意点を教えてください。

koiwa1.png 引き続くコロナ禍においては、景況の悪化や業務のあり方の見直しなどによって、パート・アルバイトなどの非正規雇用について、稼働時間の減少や休業、雇止めや解雇などの影響が深刻化しました。とりわけシフト制で勤務する労働者については、コロナ禍によって業務量が減少した理由で繰り上げて業務終了を指示されたり、適切な休業手当が支給されないようなケースも指摘されました。

 このような状況を踏まえて、厚生労働省は「シフト制で働く労働者の雇用管理を適切に行うための留意事項」(令和4年1月7日)を公表し、シフト制の労務管理にあたって事業所が留意すべき事項について注意喚起がされています。「留意点」は全12頁で構成されており、具体的には以下の内容が記述されています。

1.趣旨
2.シフト制労働契約に関する留意事項
(1)労働契約とは
(2)労働契約の締結
ア 労働契約の締結時に明示すべき労働条件
イ 就業規則に規定すべき事項
ウ 労働契約に定めることが考えられる事項  
エ 労働契約の確認
(3)労働者の安全と健康の確保
(4)労働者を実際に労働させるに当たっての労働時間の扱い   
ア 労働時間   
イ 休憩   
ウ 年次有給休暇   
エ 休業
(5)その他   
ア 労働契約の終了   
イ 期間の定めのない労働契約への転換   
ウ 不合理な待遇差の禁止  
3.労働者の募集等  
4.その他
(1)シフト制に関するご相談
(2)社会保険、労働保険の加入等   
ア 労災保険   
イ 雇用保険   
ウ 健康保険・厚生年金保険


いわゆる「シフト制」により就業する労働者の適切な雇用管理を行うための留意事項


 全体の趣旨から始まって、労働契約の締結、労働者の安全衛生、労働時間の取り扱い、労働・社会保険関係など、さまざまな論点に触れられていますが、実務上もっとも重要度が高いのは労働契約の締結に関する論点だと思います。労働契約締結時の労働条件の明示における「始業及び終業の時刻」や「休日」の記載、就業規則におけるシフト制の規定方法、労働日や労働時間の設定やシフトの変更時のルールなどが整理されていますが、いずれも現場におけるコンプライアンス意識の欠如や運用の誤り、労使間の認識のすれ違いなどが多い論点だといえるでしょう。

 労働契約締結時の労働条件の明示にあたって、「始業及び終業の時刻」や「休日」については、「始業及び終業の時刻はシフト表による」などと記載するだけでなく、具体的に始業・終業時刻や休日が記載されたシフト表を示すことが必要となります。シフト表が確定していない場合は、確定した段階で明示することが必要であり、シフト表を作成して労働者に示すためのルールを確立しておくことが求められます。

 一定の勤務日数や勤務時間を義務づけたい場合には、「毎週月曜日、水曜日、金曜日の中から就業日を指定する」などと稼働しうる最大の日数や時間数を明記したり、「少なくとも毎週月火曜日、木曜日は就業日とする」などと最低限労働する日数や時間数などを明記することも可能ですが、事業所の都合でシフトを変更・削減した際には休業手当の支払いが必要となりますので、十分に留意したいものです。

(小岩 広宣/社会保険労務士法人ナデック 代表社員)

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