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2023年8月 3日

小岩広宣社労士の「人材サービスと労務の視点」186・募集・職業紹介における労働条件明示事項の追加

Q 令和6年4月から労働条件明示事項が追加されると聞きましたが、どんな点が変更されるのでしょうか。

koiwa1.png 労働者の募集を行う際の労働条件の明示等については、平成30年1月の職業安定法の改正により、求人申し込みや労働者の募集を行う場合において、労働契約締結までの間に、試用期間、裁量労働制、固定残業代などの労働条件の明示義務が追加されましたが、令和6年4月1日の職安法施行規則の改正により、新たに以下の事項が追加されることになります。

①従事すべき業務の変更の範囲
②就業の場所の変更の範囲
③有期労働契約を更新する場合の基準に関する事項(通算契約期間又は更新回数の上限を含む)


 具体的な実務の取り扱いについては、6月28日に厚労省からリーフレット「募集時などに明示すべき労働条件が追加されます!」などの資料が公表されています。

 ①従事すべき業務の変更の範囲、②就業の場所の変更の範囲については、同一労働同一賃金における不合理な待遇差の判断にあたっての「職務の内容・配置の変更の範囲」の内容と同じであり、③有期労働契約を更新する場合の基準に関する事項は、有期労働契約の更新・雇い止め基準や裁判例などの趣旨と結びついています。年々複雑化する労使紛争を未然に防止する観点から、募集・職業紹介の段階からこれらの点について求職者などへの明示義務を課すことで、雇用関係の入り口から円満な労使関係の維持・強化をはかっていくことが期待されていると考えられます。

 業務の変更の範囲については、雇い入れ直後に予定している業務と、将来変更されることが想定される業務の変更範囲を記載することになりますが、具体的には、雇い入れ直後=営業職、変更の範囲=総務事務といったケースは少ないと考えられ、以下のように、雇い入れ直後=法人営業、変更の範囲=製造業務を除く当社業務全般のように、当初の限定的な業務よりも変更範囲が拡大するイメージで記載するのが一般的だと思います。就業場所についてはよりそのような記載が求められると考えられ、雇い入れ直後=東京本社、変更の範囲=大阪支社のようなケースはごく稀であり、雇い入れ直後=東京本社、変更の範囲=関東エリアの支社・支店のように記載することが多いと思います。

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 明示するタイミングについては、ハローワーク求人、ホームページ、求人広告などの方法を問わず、募集・職業紹介の段階で改正に従った労働条件の明示が求められますが、やむを得ない場合は「詳細は面談時に」などと付した上で、一部を別途のタイミングで明示することも可能です。この場合は、初回の面接など「求人者と求職者が最初に接触する時点まで」に、すべての労働条件を明示する必要がありますが、実際に面接や面談の際に口頭で伝えるケースでは、うっかり失念してしまったり、正確に網羅して明示することがおろそかになってしまうことも考えられるため、あらかじめ書面を準備して説明したり、面接などにのぞむ上でのタイムテーブルやフローなどを定めておくなどの対応が望ましいといえます。

 なお、面接などの過程で労働条件に変更があった場合など、当初明示した労働条件が変更される場合は、速やかに変更内容を明示することが必要となりますので、あわせて留意したいものです。

(小岩 広宣/社会保険労務士法人ナデック 代表社員)

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