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2023年12月28日

小岩広宣社労士の「人材サービスと労務の視点」207・労働条件明示のルール変更について⑤

Q 令和6年4月からの改正で労働条件通知書の明示項目の追加と同時に、職業安定法の改正も行われるといいますが、具体的にはどのような内容でしょうか。

koiwa1.png 令和6年4月から改正職業安定法施行規則が施行され、改正労基法施行規則による労働条件通知書の明示項目の追加に対応して、求職者等に明示しなければならない事項が追加されます。職安法では、職業紹介や労働者の募集を行う事業者が求職者等に対して明示しなければならない労働条件として、従事すべき業務、労働契約の期間、試用期間、就業の場所、始業・終業の時刻、賃金、社会保険の適用、使用者の名称、派遣労働者である場合はその旨などが規定されていますが、新たに以下の3点が追加されます。

①従事すべき業務の変更の範囲
②就業場所の変更の範囲
③有期労働契約を更新する場合の基準(通算契約期間または更新回数の上限を含む)


 いずれも労働条件通知書の明示項目に追加される内容と同じであり、令和6年4月からは労働条件通知書と同様に、ハローワークや職業紹介事業者を通じて求人をする場合も、これらの事項について明示を行う必要があります。求人企業は上記の項目について適切にハローワークや職業紹介事業者に対して情報提供を行い、職業紹介事業者は求人企業からこれらの情報が適切に伝えられているかを確認しなければなりません。職業紹介事業者は、求人企業から求人情報を得るためのフォームやフォーマットを運用しているケースが多いと思いますが、令和6年4月からは上記の3点を確実に追加するように変更する必要があります。

 以下の明示事項の記載例のように、業務内容や就業場所の変更の範囲、有期契約を更新する場合の基準について具体的に記載することになりますが、前回までにみてきたように、これらの記載にあたってはさまざまな留意点があるため、職業紹介事業者は求人企業からの求人内容を求職者に明示するにあたっては、求職者に対して安心かつ円滑な求人のあっせんを行うためにも、適切な内容が記載されているかどうかについて、基本的な知識を踏まえた最低限の目配せが必要だといえるでしょう。

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 なお、職安法施行規則の改正では、同時に手数料表、返戻金制度に関する事項を記載した書面、業務の運営に関する書面の情報提供の方法についても変更されます。現在はこれらの書類は事業所内に掲示することとされていますが、改正後はそうした掲示に代えて自社のホームページなどでも情報提供ができるようになります。

 ウェブ上にさまざまな情報を集約することが便宜にかなう時代を反映した変更だといえますが、ホームページの情報量などが膨大な場合は利用者(閲覧者)が容易には該当ページにたどり着かない可能性もあるため、トップページ上に分かりやすくリンクを張ったり、求人企業がサービス利用時に必ず参照するページに掲載するなどの配慮が必要でしょう。手数料表、返戻金制度については、改正後も人材サービス総合サイトでの掲載は引き続き必要な点は注意したいものです。


(小岩 広宣/社会保険労務士法人ナデック 代表社員)

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