コラム記事一覧へ

2024年2月 1日

小岩広宣社労士の「人材サービスと労務の視点」212・能登半島地震被災に関する対応について④

Q 能登半島地震に伴って自然災害時の事業運営に関するQ&Aが出されたと聞きましたが、具体的にはどのような内容ですか。

koiwa24.png 「自然災害時の事業運営に置いて労働基準法や労働契約法の取扱いなどに関するQ&A」が、1月5日に厚生労働省から公開され、以降適宜内容が更新されています。能登半島地震の発生によって多くの事業所が甚大な被害を受け、被災地以外の事業場においても、原材料や製品などの流通の支障などに伴うさまざまな影響が生じたことから、このような状況にあたって労働者に対して使用者が守らなければならない法律上の事項などについて、行政としての一般的な考え方がQ&Aとしてまとめられています。

 1月5日の公開後、15日には以下の4つの項目が追加されています。

Q3-7 新卒内定者の内定を取り消したり、入社してすぐに休ませてもいいでしょうか。

Q10-1 従業員が仕事中に地震に遭遇して、ケガをしたのですが、労災保険は適用されますか。また、地震に遭遇したのが出張用務中、休憩時間中、外回りの営業の最中であった場合も、労災保険は適用されますか。

Q10-2 地震により事業場や医療機関が被害を受けた等の事情によって、従業員が労災保険給付請求書における事業主の証明や医療機関の証明を受けるのが困難な場合はどうしたらよいでしょうか。

Q11-3 災害復旧工事における労働災害防止のために特に留意すべき事項を教えてほしい。


 Q3-7については、「新卒の採用内定者について労働契約が成立したと認められる場合には、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない採用内定の取消しは無効となります。事業主は、このことについて十分に留意した上で、採用内定の取消し等を防止するため、最大限の経営努力を行うとともに、あらゆる手段を講じていただき、取消しを行う前に、最寄りのハローワークにご連絡ください」とした上で、自宅待機などにより休業させる場合には多くの場合は原則として休業手当を支払わなければならない旨が確認されています。

 Q10-1については、「従業員が仕事中に地震に遭い、ケガをされた(死亡された)場合には、通常、業務災害として労災保険給付を受けることができます」「従業員が通勤中に地震に遭った場合や避難所等からの通勤途上でケガをした場合も、途中で逸脱・中断した場合等を除き、通勤災害として労災保険給付を受けることができます」とした上で、出張用務、休憩時間、外回りの営業について、それぞれ業務遂行性(業務命令に服している状態)があり、休憩時間中でも事業場の管理する施設(会社の建物の中など)にいるときに被災した場合には、私的行為中などを除いて、業務上の災害として労災保険の適用がある旨が確認されています。

 Q&Aの内容はいずれも極めて常識的な事項が網羅されていますが、労働法の基本的な考え方が事例ごとに整理されていますので、ぜひ一度は目を通しておきたいところです。

自然災害時の事業運営における 労働基準法や労働契約法の取扱いなどに関するQ&A(令和6年1月15日)


(小岩 広宣/社会保険労務士法人ナデック 代表社員)

PAGETOP