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2024年2月 6日

【ブック&コラム】あれから半世紀

 もう半世紀も前になるのか。連続企業爆破事件の容疑者の一人、自称桐島聡が病死したニュースをテレビで観ていると、三菱重工爆破事件の映像が流れてきた。今でも、それを見ると身震いが止まらない。私は事件現場にいたからだ。

 1974年8月30日、残暑漂う金曜午後の昼休みだった。三菱系の会社にいた私は、職場で突然の大音響と大揺れを感じ、急いで外に出てみた。斜め向かいの重工ビルが猛煙に包まれ、道路にケガ人が数人倒れていた。そして、音を立てて降り注ぐガラスの破片。危なくて近寄れず、ぼう然と立ちすくむだけ。自分の心臓がドクドク波打っているのがわかった。間もなく、駆けつけた警官に現場を追い出された。

c240206.JPG それがテロだとわかったのは翌日、犯行グループ「狼」が声明を出したのは1カ月ほど後だった。私と同じ「全共闘世代」の一部が大衆運動を放棄して、あさま山荘事件などに走り、ついには企業を狙うテロ行為にまで及んだことに、私はやりきれない怒りと寂しさを抱いたまま年を重ねた。彼は一連の企業爆破に関与し、半世紀に及ぶ逃亡生活を"まっとう"して死んだことになる。「反日帝闘争」を叫んでテロに走った彼が、今の日本をどう見ていたか、自分の行為をどう考えていたか。ぜひとも、聞きたかった。

 事件現場の丸の内仲通りはいま、かつての殺風景なビジネス街から外国ブランド店などが立ち並ぶファッション街に変身し、夜間はイルミネーションが華やかに彩っている。平和そのものの通りを歩くたびに、「もう〇年経ったか」と心につぶやき続けて半世紀。そんな人物も、めっきり少なくなっているに違いない。(俊)

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