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2024年4月23日

【ブック&コラム】消える「一身上の都合」

 「退職代行サービス」というビジネスがあるという。「会社を辞めたいが、自分からは言い出しにくい」という人が利用するサービスで、要するに代行会社が手数料をいただいて勤務先からの「円満退社」を請け負ってくれる仕組み。転職者の増加を背景に、ブラック企業に入った新入社員らの利用が多いそうだ。

 テレビのインタビューなどを見る限り、真面目で気の弱い若者の利用が多いようだが、近年は定年退職してから「第二の職場」に入った中高年者も増えているとか。法律的にはいろいろ問題が出てきそうだが、気になるのはなぜ自分自身で意思表示できないのだろうか、という素朴な疑問だ。

c240423.png もう20年ほど前になるが、知人のジャーナリストから「一身上の都合」というノンフィクション本をもらった。「一身上の都合」とは退職理由を書く時の慣用句で、その言葉に込められた会社人生の悲喜こもごもを複数の人々から取材したもの。リストラ、上司とのいざこざ、仕事の失敗、引き抜きなど、まさに「人生いろいろ」。忍従を強いられてきた会社人間が、最後に一つだけ自らの意思を通せるのが「一身上の都合」だった。それほどの重みはあったと思う。

 そんな内容で書けたのも、「終身雇用」が前提になっていた時代だったから。それに比べ、入社早々に会社を辞め、それも自身の口では言い出せずに代行会社に頼むという方法の、なんとも言えぬ"お手軽さ"に、ついタメ息が出てしまう。そんなことで、長い職業人生を続けて行けるのだろうか。つい心配になるのも、「昭和」のせいかな。(間)

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