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2024年12月26日

小岩広宣社労士の「人材サービスと労務の視点」259・SNS等による労働者募集の留意点

Q 最近はインターネットやXなどのSNSなどを利用した労働者募集が増えていますが、どのような点に留意すべきでしょうか。

koiwa24.png 最近、いわゆる「闇バイト」が話題になっています。SNSやインターネットの掲示板などで、具体的な仕事内容が明らかにされず、ただ高額な報酬が提示されるなどして、モラルに反する活動や犯罪行為などに誘導するような例も散見され、社会的な問題にもなっています。求人活動におけるSNSの利用やアプリなどの進化・普及、求職者の意識面の変化などもあいまって、求人求職をめぐるマッチングの利便性などが向上する一方で、悪質なトラブルに巻き込まれる例も若者を中心に増えており、不安や懸念も広がりつつあります。

 このような状況を受けて、厚生労働省は「職業安定法第5条の4第1項で求めている内容について」(職需発1218第1号)を発出し、求人情報について虚偽または誤解を生じさせる表示をしてはならないとする職安法の趣旨があらためて確認され、法令の規定に反しないと認められるためには、求人情報の中に以下の「6情報」を含める必要があることが示されました。

職業安定法第5条の4第1項で求められる「6情報」
①氏名(名称)
②住所
③連絡先
④業務内容
⑤就業場所
⑥賃金


 職安法5条の4第1項の規定は、以下の通りです。今回の通達で、「虚偽の表示又は誤解を生じさせる表示」とならないために必要な具体的な項目が示された意義は大きいといえるでしょう。

第5条の4(求人等に関する情報の的確な表示)
 公共職業安定所、特定地方公共団体及び職業紹介事業者、労働者の募集を行う者及び募集受託者、募集情報等提供事業を行う者並びに労働者供給事業者は、この法律に基づく業務に関して新聞、雑誌その他の刊行物に掲載する広告、文書の掲出又は頒布その他厚生労働省令で定める方法(以下この条において「広告等」という。)により求人若しくは労働者の募集に関する情報又は求職者若しくは労働者になろうとする者に関する情報その他厚生労働省令で定める情報(第3項において「求人等に関する情報」という。)を提供するときは、当該情報について虚偽の表示又は誤解を生じさせる表示をしてはならない。


 今後、インターネットやSNSなどで労働者の募集を行うにあたっては、上記の「6情報」が適切に記載されていない場合には、法令違反に問われることになりますので、十分にチェックしていく必要があります。厚生労働省のQ&Aにおいて、住所についてはビル名、階数、部屋番号まで記載する必要があり、広告などには「6情報」自体を記載せず、「6情報」が記載されている会社のウェブサイトのリンクを記載することは適切ではないという解釈が示されている点にも留意したいものです。

 なお、職業紹介事業者などが労働者を募集する場合には、求職者からの照会を受けた際に、募集主の氏名・名称などを回答することとされているため、照会先を求人情報などとともに示す場合には、必ずしも募集主の氏名・名称などを掲載しなくても誤解を生じさせるものとはならないとされています。職業紹介事業においては、この点について円滑な流れを整えていくことが肝要だといえるでしょう。

(小岩 広宣/社会保険労務士法人ナデック 代表社員)

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