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2025年3月 6日

小岩広宣社労士の「人材サービスと労務の視点」268・令和7年度の一般賃金と労使協定

Q 令和7年度の一般賃金の動向と労使協定の締結について、要点を教えてください。

 昨年8月27日に同種の業務に従事する一般労働者の賃金水準(令和7年度適用)が公表されています。令和7年度に適用される一般賃金水準の前年度との相違点は以下の通りです。

(1)全体の傾向

・職業安定業務統計の職業計:1248円(+30円)
・職種別:「厚生労働省編職業分類」の改定により昨年度との比較不能

・賃金構造基本統計調査の産業計:1320円(+44円)
・職種別:昨年度より上がる職種85職種、下がる職種は44職種

(2)各指数等の更新状況

①賞与指数:0.02(前年度から変更なし)

②能力・経験調整指数
能力及び経験の代理指標として、賃金構造基本統計調査の特別集計により算出した勤続年数別の所定内給与(産業計)に賞与を加味した額により算出した指数です。

c250306.jpg③学歴計初任給との調整:12.6%(前年度から変更なし)

賃金構造基本統計調査の勤続0年には中途採用者も含まれるため、学歴計の初任給との差(12%)を調整。

④一般通勤手当:73円(前年度から+1円)

⑤退職金割合:5%(前年度から変更なし)

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 全体としてそれほど大きな変更はないといえますが、退職手当に関する調査について、就労条件総合調査(厚生労働省)、賃金事情等総合調査(中央労働委員会)の2つの調査が更新されているため、退職手当制度を採用している場合は改めて確認しておくことが必要となります。

 令和7年度適用版として、労使協定のイメージ最新版が1月31日に公表されました。今回も前回同様、内容に大きな変更点はありませんが、厚生労働省編職業分類が改定されたため、職業安定業務統計を適用している場合は、職種の名称と番号が改定されているため、本文および別表の作成の際には注意する必要があります。

 厚生労働省編職業分類については、前回改定の平成23年より10年以上が経過し、この間の産業構造、職業構造の変化などに伴い、求人・求職者の職業認識との乖離が生じている分野もみられたため、令和4年4月に改定がなされました。改定後の職業分類による数値は令和5年度から集計しており、今回令和7年度適用分の一般賃金水準から改定後の職業分類を使用することになります。主な改定内容は、以下の通りです。

①大分類項目の見直し:11項目→15項目
 「専門的・技術的職業」、「サービスの職業」について整理され、項目名が分かりやすくなるように見直された。

②中分類項目の見直し:73項目→99項目
 マッチングの観点から項目名・分け方が見直された。

③小分類項目の見直し:369項目→440項目

④細分類項目の廃止:892項目→0項目
 細分類の廃止に伴い、マッチングの観点で必要なものについて、小分類項目に位置づけるなどの見直しがされた。


 なお、労使協定の締結にあたっては(過半数労働組合がない場合は)過半数代表者の選任が前提となりますが、この手続きに不備があると労使協定全体が無効になってしまうため、厚生労働省が公表している労使協定イメージでも、令和6年公表版から特に多くのスペースを割いてこの点について注意を促しています。基本的な論点ではありますが、この機会にいま一度、労使協定イメージの内容にも目を通しておきたいものです。


(小岩 広宣/社会保険労務士法人ナデック 代表社員)

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