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2025年10月28日

【ブック&コラム】『がんが気になったら読む本』

がん専門医ががんに罹った...

c251028.jpg著者・佐谷 秀行
毎日新聞出版、定価1870円(税込)


 日本のがん研究の第一人者である筆者が、あろうことか、前立腺がんを発症した。そんな時、本人は何を思い、どんな行動をするのか。本書はそんな出来事を基にした「体験的がん患者論」となっており、文章もわかりやすい。

 「第1章 がんとは何か?」から「第7章 がん治療の近未来」の7章で構成。がんの基礎知識や最新医療の現状を分かりやすく解説しており、これだけでも読み応え十分だ。しかし、最も注目すべきは、筆者自身が前立腺がんを発症し、発見、検査、治療、予後に至る過程を"患者目線"で正直に描いていること。

 「第4章 がんとの闘い方」でそれを詳細に記録しているが、検査結果が出るまでの不安や心の拠り所となる言葉や習慣など、"普通の患者"と全く変わらないことになぜか"安心"する。さらに、セカンドオピニオンの重要性、良医の見分け方など、医師でなければわかりにくいことも解説している。

 筆者はがんという持病を抱えながら、希少難病の医療講演会などに欠かさず参加して講演するなど、誠実な人柄でも知られる。がん以外の患者にとっても大いに参考になる1冊だ。 (本)

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