Q 新しく教育訓練休暇給付金という制度ができたそうですが、どのようなものですか。
A 令和7年10月から、「教育訓練休暇給付金」という新しい制度が創設されました。これは、労働者が離職することなく教育訓練に専念するため、自発的に休暇を取得して仕事から離れる場合に、失業給付(基本手当)に相当する給付として賃金の一定割合を支給することで、訓練・休暇期間中の生活費を保障する趣旨で設けられた制度です。会社勤めをしている人の中には、「真剣に学びたい知識・技能や取得したい資格があるけど、仕事が忙しくてチャレンジできない」とか、「思いきって会社を休んで通学したいけど、その分の収入が減ってしまうと困る」と考えるケースも少なくありませんが、教育訓練休暇給付金は、そのような状況に対する支援のひとつとして、一定の要件を満たした場合に活用することができます。給付金の主な内容は、以下の通りです。
教育訓練休暇給付金の支給対象となる休暇
②労働者本人が教育訓練を受講するため自発的に取得することを希望し、事業主の承認を得て取得する30日以上の連続した無給の休暇
③次に定める教育訓練等を受けるための休暇
・学校教育法に基づく大学、大学院、短大、高専、専修学校または各種学校が提供する教育訓練等
・教育訓練給付金の指定講座を有する法人等が提供する教育訓練等
・職業に関する教育訓練として職業安定局長が定めるもの(司法修習、語学留学、海外大学院での修士号の取得等)
教育訓練休暇給付金の主な要件
•休暇開始前に5年以上、雇用保険に加入していた期間があること (離職期間等がある場合であっても、一定の要件に合致すれば加入期間を通算できる)
•業務命令によらず、就業規則等に基づき教育訓練を受けるための無給の休暇を取得していること
教育訓練休暇給付金の給付日数
| 雇用保険の加入期間 | 5年以上10年未満 | 10年以上20年未満 | 20年以上 |
| 所定給付日数 | 90日 | 120日 | 150日 |
給付日数は、上記のように雇用保険の加入期間に応じて異なり、給付日額は、失業給付の算定方法と同様に、原則休暇開始前6か月の賃金日額に応じて算定されます。給付を受けることができる期間は、休暇開始から1年間であり、この期間内であれば、教育訓練休暇を分割して取得した場合であっても、給付金を受けることができます。
教育訓練休暇給付金は、雇用保険の一般被保険者である労働者本人の意思によって、会社からの業務命令によらず、就業規則等の規定に基づいて、教育訓練を受けるための無給の休暇を取得することが支給要件になっています。したがって、業務で必要とされる資格等を業務命令によって取得させるために休暇をとる場合や、収入をともなう就労を行なった日、有給休暇や育児・介護休暇を取得した日については対象外となります。また、休暇取得中は、業務連絡や会議出席等の理由も含めて出勤を求めることは認められず、30日以上の連続した休暇を取得する必要がありますので、注意したいものです。

給付金を受けるのは労働者本人ですが、給付金の手続きについては会社の対応が必要となります。上記の流れにしたがって、労働者本人と会社との間での教育訓練休暇の取得についての合意、賃金支払い状況等を記載した賃金月額証明書のハローワークへの提出、ハローワークから交付された賃金月額証明票(本人手続用)および教育訓練休暇給付金支給申請書の速やかな労働者本人への交付等について、円滑かつ確実な対応を期していきたいものです。
(小岩 広宣/社会保険労務士法人ナデック 代表社員)






















