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2014年2月17日

政府が提出を予定する労働関係法案

派遣法改正案と有期雇用の特別措置法案は3月提出へ

 1月24日に召集された第186通常国会で、政府は2013年度の補正予算を成立させ、新年度予算の本格的な審議に入っている。厚生労働省関係の新規法案は11本で、このうち予算関連法案を中心に7本が2月14日までに閣議決定を経て国会に提出された。労働法制関係は、①労働者派遣法改正案(派遣法)、②有期雇用の特別措置法案(有期特別法)、③パートタイム労働法改正案(パート法)、④労働安全衛生法改正案(安衛法)――の4本。注目される4法案について現状と改正の目的を整理する。(報道局)

is140217.JPG 今国会の会期は6月22日までの150日間で、政府は全体で新規法案80本と条約18本の提出と成立を目指している。会期延長の可能性もあり得る。労働法制4法案に関する審議入りの順番は、全方位に情勢を見極めながら衆参・厚生労働委員会の理事会などを中心に与野党で協議して決めていくため、現時点では明確に固まっていない。 

 また、労働法制は「与野党の対立必至」といえるが、現在は野党各党の理念や考え方などが幅広くなっているため、厳密には「与野党対立」という表現は正確ではなく、各法案に対してそれぞれの野党各党が判断して賛否に臨むことになる。

労働者派遣法改正案

 派遣法改正案は、労働政策審議会の職業安定分科会・労働力需給制度部会で審議されており、21日までに厚労相が「法律案要綱」を諮問する。労政審の答申を待って、政府の新規法案提出のタイムリミットである3月中旬に国会に提出される運びだ。

 政令26業務を廃止し、期間制限を「派遣労働者」と「受け入れ事業所(派遣先)」のそれぞれに設けるほか、派遣事業の一般(許可制)と特定(届け出制)の区別をなくして、すべて許可制とすることなどが軸となる。このほか、派遣元に派遣労働者のキャリアアップのための計画的な教育訓練の実施を義務付けることも盛り込まれている。

 規制緩和か強化かといった従来までの色分けを超えた抜本改正で、部分的な改正項目だけでなく、全体像を精査すると「規制のかけ方の大きな見直し」という表現が適当と言える。

有期雇用の特例措置法案

 有期特別法は、労働条件分科会有期雇用特別部会と職業安定分科会高年齢者有期雇用特別部会が昨年12月下旬から合同で検討。2月14日に労政審として建議した。手順を踏んで、3月上旬の国会提出を目指し、成立した場合は来年4月の施行を念頭に置いている。

 特例とする有期労働者は、(1)一定の期間内に完了する業務に従事する高収入かつ高度な専門的知識、技術または経験を有する人(上限10年)、(2)定年後に同一の事業主、この事業主と一体となって高齢者の雇用の機会を確保する事業主に引き続いて雇用される高齢者――に限って対象とする。

 現状は、昨年4月に施行された改正労働契約法において、同一職場で5年以上働いている有期契約社員(パート、契約などの非正規社員)が無期契約への転換を申し出れば、企業側は拒否できない「5年超ルール」が、すべての有期労働者に適用されている。

 この措置によって政府は、「高い能力の活用と維持向上を図ることができる」などとしている。昨秋の臨時国会で、与党の主導で「国家戦略特別区域法」と「改正研究開発力強化法」が成立したのを受けた“対応”で、今後、時代に適応した労働法制の「構築過程のあり方」はいかにあるべきかといった論点を含め、国会での審議が注目される。

パートタイム労働法改正案

 パート法改正案は、2月14日に提出された。労政審の雇用均等分科会で議論されてきたもので、その中心は同法8条で規定している「差別的扱いの禁止」の範囲拡大だ。パートタイマーであることを理由に「通常の労働者」(正社員)と異なる労働条件で就労することを禁止しているが、対象は①正社員と職務内容が同一、②人事活用の仕組み・運用が同じ、③無期雇用あるいは実質無期雇用――の3要件を満たすパートに限られていたことから、対象者は全パートの1.3%程度に過ぎなかった。

 今回、3要件のうち③を削除して、①と②の2要件を満たすパートに対象を拡大するもので、厚労省の試算では新たな対象者は約10万人、比率は2.1%程度に上がるとみられている。この改正は、前政権時代の12年6月に同分科会が出した建議に基づいている。

労働安全衛生法改正案

 安衛法改正案は、一昨年の夏に自民、公明、民主で修正合意していたもので、「メンタルヘルス対策の充実・強化」が主要項目のひとつ。内容は「精神的健康の状況を把握するための検査等」という新たな項目を設け、(1)労働者に対し、医師または保健師による精神的健康の状況を把握するための検査を実施、(2)検査を行った医師または保健師から当該検査の結果の通知――などが盛り込まれている。精神疾患が増加の一途をたどる現代の傾向を反映したもので、成立すれば来年4月施行の公算が高い。

 また、施行日は別になるが、化学物質による健康被害が問題となった胆管がんなど最近の労災の特性を踏まえた未然防止策の充実、受動喫煙防止対策の推進(努力義務)など6項目が追加、見直しされている。 

 

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