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2014年9月 1日

國分秀世・メイテック社長に聞く(上)

「エンジニア価値」の向上に注力

 メイテックグループは、日本のモノ作りの基盤になる開発・設計分野を中心に、大手メーカーなど約1000社に8000人近いエンジニアを常時派遣している技術者派遣の最大手。今年4月、西本甲介会長からバトンタッチされた國分秀世社長は、同社初となる生え抜きの技術者出身だ。「エンジニア価値」を上げることで、社会との「共生と繁栄」を目指す。(聞き手・大野博司=報道局長、労政ジャーナリスト)

―― メイテックは今年で創業40周年を迎え、グループ中期経営計画(注)もスタート。その節目に社長に就任したことをどう受け止めていますか。

is140901.jpg國分 3カ年のグループ中期経営計画のスタートに合わせてバトンタッチして引き継いだことは、身の引き締まる思いです。これから当社が目指すべき姿では、「エンジニア価値」の向上を中心に据えました。すなわち、当社のエンジニアのみならず、生涯にわたるプロエンジニアを目指す世の中のエンジニアが、豊かなエンジニア人生を実現できるよう、その機会と場を提供する組織を目指します。

―― 08年のリーマン・ショックは国内の企業に甚大な影響を与えました。メイテックもそのあおりで受注が激減したにもかかわらず、社員を解雇せずにスキルアップに向けた研修を重ねました。2010年度からは、4期連続の増収増益で業績を急回復させています。

國分 当グループのエンジニアはいわゆる正社員で、日ごろからじっくりスキルの蓄積を図っています。リーマン・ショックの時、最も重要な資産である社員を守り抜くと判断しました。バブル崩壊後の1990年代前半に社員を失ったあの胸の痛みが深く刻まれており、リーマン・ショックの際は経営として同じ轍(てつ)を踏まない覚悟を決めたのです。あの時にリストラをしていたら、これほどの業績回復は望めなかったと思っています。

―― エンジニア派遣という仕組み、雇用形態について特徴を聞かせてください。

國分 メーカーの設計開発部門はいわばモノ作りの中枢であり、そこに当社のエンジニアを送り込み、派遣先エンジニアの方々とのチームの一員になるには、高いスキルとコミュニケーション能力が必要です。当社も、派遣先が要求する技術内容などを細かく検討して、誰が適任かを見分ける「ベストマッチングシステム」を通じて派遣しているので、マッチング精度が高いのが特徴です。

 同じエンジニアでも、派遣先の正社員ともなると管理業務などもこなさなければならず、「生涯エンジニア」を全うできる人は限られるのが実情です。しかし、当社のエンジニアなら、派遣先が変わってもエンジニアとしてのスキルで勝負できますから、満足度も高いのです。派遣先の刺激にもなっていて、外部人材の有効性も評価する企業が増えています。もっとも、派遣先の部署が設計・開発部署ですから、派遣元として当社も企業秘密の保持には万全を期しています。

―― 労働者派遣法改正案が今秋の臨時国会で審議される見込みですが、特定派遣事業者がこれまでの「届け出制」から一律に「許可制」になった場合、メイテックへの影響は考えられますか。

國分 基本的にありません。今回の改正の趣旨は、いわゆる登録型の派遣社員の雇用安定を目指しているとみていますから、当社の仕組みには影響はないと受け止めています。成立して「許可制」に一本化となれば、それに即して許可を申請する格好となります。ただ、法改正を機に派遣業界全体がコンプライアンス(法令順守)の底上げを図り、社会的に認知されるよう体質改善する必要はありますから、当社もその点で貢献したいと思っています。 (つづく)


注:グループ中期経営計画 メイテックグループの新3カ年計画(2014~16年度)。目指すべき姿として「エンジニア価値」を起点に、社会、顧客、株主、社員を加えた5つの価値をつなげて企業価値全体を高める。技術者派遣市場を「ハイエンド」など3ゾーンに分けて効率化を図り、最終年度の16年度に売上高880億円、営業利益100億円を目指す。
 

國分 秀世氏(こくぶん・ひでよ) 1959年、福島県郡山市出身。82年東海大学工学部卒、同年にメイテック入社。エンジニアとして自動車、電機などの民生品の設計開発や工場設備設計など、幅広い設計業務を約14年にわたり担当。98年広報部長、2003年取締役、07年派遣事業グループCEO。14年4月社長就任。

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