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2015年2月 2日

人材ビジネス業界、「キャリア支援」に注力

派遣法改正案の成立を視野に「選ばれる会社」へ

 人材サービス業界のキーワードは「キャリア支援」――。製造請負・派遣の日本生産技能労務協会(技能協、清水竜一会長)、事務系派遣を中心とする日本人材派遣協会(派遣協、水田正道会長)、ホワイトカラー転職支援の日本人材紹介事業協会(人材協、渡部昭彦会長)などの業界団体が、「会員企業の勉強会の場」となる新年の会員交流会・賀詞交歓会を相次いで開催した。今年の特徴は、いずれの団体も派遣社員や転職希望者らに対する「キャリア形成支援」をテーマの中心に据えたことだ。

 年内成立が見込まれる改正労働者派遣法に盛り込まれる「(事業者による)キャリア形成支援制度の義務化」と併せ、社会全体の“時代の要請”をとらえた動きと見られる。法改正などを契機に、近い将来、事業者の大幅な淘汰(とうた)が予測されるが、キャリア支援の充実度は生き残りをかけた事業者の大きな要素となりそうだ。(報道局)

業界団体は既に着手、「次の一手」も模索

 技能協は1月21日、派遣協は同27日、人材協は同29日にそれぞれ開いた。

 技能協が推奨し、製造請負事業改善推進協議会が厚生労働省から受託して2010年度から実施している「製造請負優良適正事業者認定制度」の審査基準の一つに「キャリアパス」の明示があり、「一般作業員からリーダーや管理職へ昇進した実績があるか」、「職業能力開発に必要な予算の確保、支援する職制上の組織があるか」――などが点検項目とされ、基準に達していない事業者は「認定」を得られない格好となっている。

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業界のセミナーは「キャリア支援」一色
=技能協の新春会員交流会・1月21日

 最近の動きでは、政府が16年度から本格実施を目指している非正規社員を対象にした資格制度(業界検定)の創設に関し、技能協が業界検定の認定団体のひとつとして活動する。今年は8月と11月に検定の「トライアル試験」を実施する予定で、16年度からの本格始動に向けて着々と準備を進めている。

 業界の中心的存在にある派遣協は、ここ数年来、「キャリア形成支援」の取り組みに余念がない。協会として、派遣社員本人の希望に基づいたキャリア形成を協会会員会社が主体的に対応できるよう、サポート体制を整備している。また、12年度から、派遣社員を対象にした「キャリア形成支援セミナー」、派遣元担当者向けの「キャリアカウンセリング・スキルアップセミナー」などを全国各地で継続実施している。この分野を協会事業の中核に置き、充当する事業費も大幅に増額している。

 さらに、派遣協は人材ビジネス関連の5団体が参画している業界横断的組織・人材サービス産業協議会(JHR)のキャリア形成支援プロジェクト「4つのチカラ『磨きセット』」を有効活用。JHRの調査・分析の結果、「傾聴共感力」「役割遂行力」「情報発信力」「感情管理力」の4つの就業基礎力が、高時給や派遣先からの直接雇用の打診が高まる傾向にあることから、派遣社員自らが自己診断して力を伸ばすことができるツールとして、JHRと協力しながら活用の幅を広げていく方針だ。

 また、このキャリア支援体制の整備や充実度は、今年度からスタートして現在初めての審査が行われているJHR運営(厚労省の委託事業)の「優良派遣事業者認定制度」において、重要なチェック項目に据えられている。

 職業紹介の人材協も、JHRが進める「キャリアチェンジプロジェクト」を通じて、「ポータブルスキル活用研修」を今年度下期から実施しており、転職者の業種や職種が変わっても通用する汎用スキルや適応力などを身に付けられるプログラムを展開中だ。

事業規制が含まれる法改正で淘汰と再編の可能性

 今国会に提出される予定の労働者派遣法改正案には、人材派遣会社に対する規制強化が幾つか含まれている。その要件のひとつが「派遣労働者のキャリア支援」。派遣労働者は一般的にスキルアップの機会が乏しいとされ、長期的・系統的な教育訓練を受ける機会が少ないとの指摘があった。雇用形態にかかわらず、働く人のキャリアアップは社会全体で担う時代に入っており、改正法案では派遣会社に計画的な教育訓練の実施を義務付け、それを認可要件の一つにすると規定している。

 各業界の動きはこれを念頭に置き、「果たすべき役割」として受け止めているが、キャリア形成には時間とコストが掛かるため、企業体力の有無によって成否が分かれ、業界内の淘汰(とうた)とそれに連動して人材サービス事業の再編が進む可能性が高いとの見方が強まっている。

 

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