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2015年5月 4日

大学生の就職内定率好調だが

離職率も上昇傾向、打つ手なし?

 大学生の就職内定率が好調を続けている。好景気を反映して企業の新卒採用意欲が高まっているためだが、企業側と学生側の希望がずれるミスマッチも相変わらず健在で、入社後の離職率は上昇傾向にある。就職戦線は来春卒業生の活動が本番を迎えているが、ミスマッチの解消・緩和に向けた対策は後手に回っている。(報道局)

is150504.png 文部科学、厚生労働両省が発表した「大学等卒業予定者の就職内定状況調査」によると、今春卒業した大学生の2月1日時点の内定率は86.7%と前年同期比3.8ポイント増。11年3月卒の77.4%を底に4年連続で上昇しており、今年の水準はリーマン・ショック前の08年3月卒の88.7%に近付きつつある。5月中旬に発表予定の4月1日時点の内定率も、前年の94.4%を上回るのは確実で、リーマン前の96.9%にどこまで近づくか注目される。

 しかし、今回の同調査の詳細をみると調査対象は112校、6250人で、内定率はここから推計した数値。対象校の中には大学のほか、短大、高専、専修学校も含まれる。中心となる大学の場合、卒業予定者は56万人で、そのうち就職希望者は43.1万人。さらに就職希望者のうち、内定者数は37.4万人と推定したものだ。

 内定者数を就職希望者数で割ったのが内定率だが、卒業予定者で割ると66.3%に大きく下がる。言い換えると、大学生56万人のうち、4分の1の12.9万人は就職を希望せず、希望しても5.7万人が内定をもらっていないことになる。就職を希望しないのは大学院などへの進学、実家の家業継承、家事手伝いなどが理由とみられる。

 内定をもらえない5.7万人については、例年、4月時点になると数を減らすが、それでも未内定者が出るため、厚労省は今年もハローワークを通じて「未就職卒業生への集中支援」を実施。1~2月で2万人を超える就職に結び付けた、としている。

企業規模、業種によるミスマッチは変わらず

 大学と企業の関係者の話を総合すると、大手、有名企業に限れば「厳選採用、有名校優先」の実質方針に大きな変化はなく、学生側の大企業志向、業種選別志向にも目立った変化はないことから、ミスマッチが改善している実感はないという。

 リクルートワークス研究所が4月に発表した来春卒業の大卒求人倍率によると、就職希望者約41.7万人に対して、企業の求人予定数は約71.9万人で求人倍率は1.73倍というかなりの売り手市場にみえる。

 しかし、規模別では従業員300人未満の企業が3.59倍の高さなのに対して、同1000~5000人未満になると1.06倍に下がり、5000人以上の大企業では0.70倍と買い手市場に変わる。また、業種でも危険業務が多いとして敬遠されがちな建設業の倍率は6.18倍に達しており、長時間労働が多いとされる流通業も5.65倍なのに対して、高給イメージの強い金融業は0.23倍しかない。これらはほぼ例年の傾向であり、ミスマッチは容易に解消、緩和しそうにない。

 ミスマッチは入社後の離職に結び付きやすく、厚労省の追跡調査では、入社3年目までの離職率は最新の11年3月卒業生で32.4%と3割を超えている。リーマン直後の09年3月卒業生は先行き不安もあって28.8%に下がっていたが、10年3月卒業生になると31.0%になり、景気回復に伴って離職率は再び上昇傾向にある。

 都内のハローワークの担当者は「入社3年以内の離職というのは、就職先がブラック企業だったり、職場の人間関係に溶け込めなかったりというケースが圧倒的に多く、積極的な理由で転職するケースは少ない。ハローワークとしても優良な中堅、中小企業の情報発掘に努めており、少しでもミスマッチを減らしたい」と話している。

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