スペシャルコンテンツ記事一覧へ

2017年11月13日

人材サービス産業協議会の「人手不足と働き方改革」シンポジウム(上)

「採用力強化型の働き方改革」を提言、基調講演で大久保氏

 人材サービス産業協議会(JHR、水田正道理事長)主催のシンポジウムが11月9日、福岡市で開かれた=写真上=。「人手不足と働き方改革」をテーマに、基調講演や地元企業による採用・人材活用の事例発表、パネルディスカッションの三部構成で展開。「働き方」の意識や環境が大きな変革過程にある中で、参加者たちが人材サービス業界の果たすべき新たな役割や責務について共有した。シンポジウムの様子や発言要旨を2回に分けて紹介する。(報道局)

「時代の変化と変革に真摯に向き合おう」水田理事長

sc171113_1.jpg JHRは「人材サービス産業の近未来を考える会」を前身として、2012年10月に発足。国内の主要な民間人材サービス業界5団体が出資・運営している横断的な連携組織で、労働市場で起こる課題に多面的に取り組み、次世代の労働市場の創造を目的に活動している。今回のシンポジウムは九州経済連合、福岡労働局、福岡県、福岡市が後援した。

 冒頭、JHRの水田理事長は「働き方改革は待ったなしの課題。多様性のある働き方をどこまで実現できるかが重要で、それには私たち人材サービスに携わる人間が汗を流さなければならない」と強調。また、AI(人工知能)の進化が労働市場に与える影響と規模は未知数ながら、大きな変化を与えるのは必至との認識を示し、「それに伴うミスマッチの発生を極小化していくことは業界に従事する一人ひとりの双肩にかかっている」と呼び掛けた。

 そして、今回のシンポジウム開催の意義を参加者と再確認したうえで、水田理事長は「雇用、労働に関する時代の大きな変化と変革に真摯に向き合い、さらに社会から必要とされる業界の健全発展を強力に進めていこう」と力を込めた。

「働き方改革に挑戦する企業を全力で応援すべき」大久保氏

 第一部では、内閣府や厚生労働省など複数の有識者検討会などで委員を務める、リクルートワークス研究所の大久保幸夫所長が基調講演した=写真下=。働き方改革に関連するものでは、「仕事と生活の調和のための時間外労働規制に関する検討会」委員などを務めている。

sc171113_2.jpg はじめに、44年ぶりの未曽有の求人難にある現状や2017年卒の大卒新採用計画で半数以上の企業が「充足していない」と回答している実態などについて調査データを基に説明し、「行政処分が下されなくてもインターネットなどでブラックとの評判が広がると、イメージを回復するのは容易でない。採用が困難になり、規模縮小や人手不足倒産に陥るケースもある」と指摘。「こうなる前に先手を打って働き方改革に着手しないと経営の解決可能性の道筋は遠のく。会社の経営改革や採用方法変更などのお手伝いも人材サービスの役割となるが、その際、採用力強化型の働き方改革が求められる」と述べた。

 「採用力強化型の働き方改革」として、まずは法改正が確実視され、社会的な関心事となっている労働時間の問題を取り上げた。残業時間をいかにゼロにするか、残業なしの働き方を用意するかを課題に、「効率よく働いて早く帰ることを推奨し、マネジメントのあり方やルールを見直す」、「テレワークや直行・直帰制などによって、移動時間を削減するとともに集中できる時間を作る」などを解決策の例に挙げて促進を呼び掛けた。

 また、一人が担当するタスク(仕事)の組み替え、さらにはタスクの切り出しとマルチタスク化(多能工化)によって、「一人当たりの労働時間を減らす」、「切り出したタスクを短時間ジョブにくくって臨時労働力に任せる」、「マルチタスク化で生産性を上げ、休日を増やす」などの手法を説明した。このほか、「手待ち時間・周辺雑務に改革のヒントがある」としてドライバー業務の具体例で解説。加えて、「業務改革に踏み込んだ働き方改革」として、24時間営業・深夜営業の見直し、即日配達・時間指定配達や短納期の見直し、無料サービスの有料化、(上司のための)作成資料の簡素化などを挙げ、「必要に応じて顧客を巻き込むことも検討すべき」と説いた。

 講演の中盤までを総括して大久保氏は、「働き方改革にはお金が掛かるため、生産性向上を図らないと両立しない。ただし、両立し始めると相乗効果で経営と人材の双方がレベルアップしていく」との展望を示した。また、「ワークルールばかりをフォーカスしているケースも見受けられるが、人手不足の中で新たな働き方に目を向けた経営改革としての観点が必要」と強調した。

 終盤は、転勤制度の問題点や健康と生産性向上の課題などにも言及し、それらが採用力と定着率アップにつながることを力説した。そして、人材サービス産業は「働き方改革に挑戦する企業を全力で応援するべき。働きやすく、働きがいのある会社に人材をいざなうことは人材会社の使命だ」と述べ、具体策として(1)求職者の「多様な」働き方ニーズを把握・分析する、(2)経営戦略としての働き方改革のストーリーを求職者にしっかりと伝える、(3)短時間勤務などの働き方改革に伴って生まれた仕事をマッチングする、(4)「働き方」を実際に体験するインターンシップなどの機会を仲介する――などを提言した。

 次回の『スペシャルコンテンツ』では、企業の事例発表とパネルディスカッションの要旨を紹介する。

 

【関連記事】
「人手不足と働き方改革」をテーマに人材サービスの役割考える
JHRが福岡でシンポジウム(11月9日)


 

PAGETOP