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2020年10月19日

「不合理な格差」めぐる最高裁判決

非正規労働者の待遇改善へ"前進"

 企業の正規、非正規の待遇格差をめぐって非正規社員が起こした訴訟で最高裁の判決が13、15日と5件相次ぎ、裁判所が「不合理な格差」の実例を示す形となった。結果は、退職金やボーナスは非正規側の敗訴、扶養手当などの各種手当は勝訴という"痛み分け"となったが、政府が進める同一労働同一賃金の政策に沿う形で、今後も「不合理な格差」を是正する流れは進みそうだ。(報道局)

 訴訟の内容は①大阪医科大のアルバイト職員が賞与支給を求めた②東京メトロ系売店勤務の契約社員が退職金支給を求めた③日本郵便の郵便配達の契約社員が扶養手当の支給を求めた④同様に年末年始手当を求めた⑤同様に夏季・冬季休暇の取得を求めた、の5件。③~⑤については原告が東京など3カ所に散らばっていたが、同一企業内での訴訟であることから最高裁で"一本化"した。いずれも旧労働契約法第20条で禁じている「不合理な待遇格差」に該当するかどうかが争われたものだ。

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「格差」の判断は分かれた

 ① と②については、正規と非正規では業務の難易度や責任に軽重があり、長期的な人材確保・定着の観点から正社員のみへの支給は「不合理とは言えない」と認定。③~⑤については、争点となった各種手当などは正規、非正規間の業務に大きな違いはなく、契約社員でも継続勤務が見込まれる場合は対象になるとして「不合理」と認定した。

 それぞれの判決とも詳細な根拠が述べられ、それを読む限り妥当な判決ではある。しかし、退職金やボーナスの支給に関する制度変更が多くの企業にとって困難を伴うのに対して、各種手当の支給は企業側の負担は相対的に少ないことから変更は容易で、今回の一連の判決は企業側に立った内容との見方ができる。

 ① ②は1審で原告が敗訴したが、2審では勝訴。③は1審で原告が勝訴したが2審で敗訴、④と⑤は1、2審とも原告勝訴と、裁判官の判断も「不合理な格差」に対する判断はさまざまに分かれた。その意味で、最高裁の判断は「保守的」「現実的」という色合いが濃い内容だったと言える。

 ただ、今回の判決がすべての非正規社員に適用可能かどうかとなると、現実は単純ではない。総務省の労働力調査によると...


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