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2021年3月 8日

コロナ下の春闘終盤

労組の要求は"控え目"

 今年の春闘は16日からの集中回答日に向け、各社の労使交渉は終盤に差し掛かっている。今年は新型コロナウイルスの感染が長期化して、景気の先行き不透明感が強まっていることから、賃上げ交渉は難航している。とりわけ深刻な人手不足を背景に、これまで賃上げ攻勢を強めてきた労働組合側には逆風となっている。(報道局)

 連合がこのほど集計した、傘下2076労組の今月1日時点の賃金引き上げ要求額(定期昇給+ベースアップ、加重平均)は月額平均7846円となり、引き上げ幅は2.64%。要求幅が3%を下回ったのは2013年以来8年ぶり。引き上げ要求額は前年の8985円を1139円も下回っている。

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UAゼンセンの21年春闘要求に向けた
執行部の記者会見(3月3日、東京都内)

 従業員規模別でみても、300人以上の中堅・大企業は721労組で7903円(同2.63%増)で、前年より1169円減。300人未満の中小企業でも1360労組で7318円(同2.80%増)で同823円減となり、規模の大小を問わず、いずれも3%未満で労組側の控え目な要求が目立つ。

 また、有期・短時間・契約などの非正規労働者の要求も時給べ―スでは164労組で36.80円と前年より4.19円低く、月給ベースでも75労組で5632円とやはり1410円低い要求となっている。

 賃金以外の待遇改善を求める交渉も、昨年より減っている。例えば、働き方改革の中心的課題である「長時間労働の是正」では、「36協定の見直し」が499件(前年比115件減)、「時間外・休日割増賃金の引き上げ」は109件(同46件減)、年次有給休暇の取得促進は656件(同105件減)、雇用安定の「無期転換ルール促進」は374件(同17件減)など、軒並み減っている。

 一方で、「一時金支給」は284件(同60件増)、「障害者雇用」は254件(同49件増)、「男女間賃金格差の是正」は114件(同62件増)と増えており、昨年は交渉テーマに上らなかった「65歳までの雇用確保」が174件、「テレワークの導入」が178件ある。

 連合では経済の好循環実現に向けた生活の底上げを目標に、今年も「2%程度の賃上げ」を共通目標に掲げているが、コロナ禍による業績不透明を理由に、経営側の姿勢は例年になく厳しい。そもそも要求段階から労組側が3%を切る、控え目な要求を出していることから、最終的には前年をさらに下回る水準で妥結する可能性が高い。

 昨年の賃上げ額は、連合発表は5506円(前年比1.90%増)、経団連発表では7096円(同2.12%増)、厚労省発表では6286円(同2.00%増)と少しずつ違いはあるものの、大体、2%程度の賃上げは実現した模様。ただ、前年に比べると、賃上げ額、賃上げ率とも下がった。

 帝国データバンクの調査によると、21年度に正社員の賃金改善を見込んでいる企業は42.0%(前年比11.3ポイント減)で、14年度当時の46.4%と並ぶ7年ぶりの低水準。賃金改善が「ない」は28.0%(同7.8ポイント増)、「わからない」も30.0%(同3.5ポイント増)あり、今年はコロナ禍を反映して賃金アップに慎重な企業が多い。

 国際比較でみる限り、...


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