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2021年5月24日

主要人材ビジネス企業の20年度決算

コロナ直撃、軒並み営業利益二ケタ減

 人材ビジネスの主要企業の2020年度決算がほぼ出そろった。年間を通じて新型コロナウイルスの感染拡大が繰り返され、企業活動が制限されたことから、人材ビジネス業界も大きな影響を受け、減収減益に陥る企業が続出した。21年度も感染の収束が不透明なことから、慎重な予想をしている企業が多い。(報道局)

sc210524.png 業界最大手のリクルートホールディングス(HD)は、売上高が5.4%減、営業利益が21.0%減の減収減益で、利益の落ち込みが目立った。最大部門の人材派遣は国内(スタッフサービスHDとリクルートスタッフィングの合計)は昨年4月から同一労働同一賃金が大企業に適用され、派遣単価の上昇につながったため、かろうじて前年並みを維持したものの、海外がコロナ禍でダウン。前年まで絶好調を維持した求人情報や人材紹介なども、企業活動の抑制による需要減の影響をモロに受けた形だ。

 こうした傾向は他社もほぼ同様で、パーソルグループは売上高が2.0%減、営業利益は32.4%減となった。売上高では国内人材派遣が3.9%増だったが、人材紹介が28.6%減と大きく落ち込むなど、収益の足を引っ張った。派遣分野のマーケティング領域の時短、企業の中途採用の見送りなどが相次いだのが響いた。

 日本人材派遣協会の派遣社員の実稼働者総数調査(508事業所)によると、稼働者は昨年4~6月期からコロナ禍によって4四半期連続で減少が続いており、前年より5%前後の約2万人減となっている。派遣各社は派遣単価の上昇やテレワーク推進などに努めたものの、派遣単価の上昇分はほぼ派遣スタッフの給与増となったことから、稼働者減がそのまま収益圧迫につながった。

 その中にあって、ヒューマンHDも就業スタッフの減少に見舞われたが、RPA導入サービスに注力して利用が550社を突破したこと、行政助成金関連業務を受注したことなどから、派遣スタッフの稼働日数は増加。売上高は微減にとどまり、経費節減効果もあって利益は大きく膨らんだ。WDBも主力の医療、化学、食品業界などへの研究員派遣の打ち切りがほとんどなかった一方、経費削減が進んだため増収増益に。専門分野に特化した派遣の強みが出た。

 21年度について、リクルートは売上高の通期見通しが2兆4500億~2兆6000億円(同8.0%~14.6%増)とかなりの幅がある。変異ウイルスの拡大などでグローバル経済の回復、安定には時間が掛かるため。国内もワクチン接種が遅れていることなどでやはり時間が掛かるとの見通しのため。パーソルも年度後半からは回復基調になるとの前提で売上高は1兆円(同5.2%増)を予想しているが、先行き不透明感はぬぐえず、少なくとも前半はコロナに翻弄されそうな情勢だ。

 エンジニア、製造派遣・請負系では、「正社員技術者」のメイテックが10年連続増収、初の1000億円台を突破した前年から、一転マイナスに転じ、売上高は4.3%減、営業利益は20.8%減の減収減益。エンジニアの年間稼働率がメイテックは6%減、メイテックフィルダーズも10%減に下がり、前年までのフル稼働状態はなくなった。

 日総工産も主力の自動車関連が大きくダウンしたため、売上高は9.0%減、営業利益は15.1%減と苦戦。nmsも最大部門のEMS事業(エレクトロニクス・マニュファクチャリング・サービス)をはじめ、主力が内外とも不調に。従業員の休業手当を特別損失に計上したことなどから、最終損益は赤字となった。一方、UTグループで、前半は自動車メーカーなどの操業停止があったものの、後半は受注環境が好転し、積極的なM&A効果も手伝って、売上高は13.8%増となった。

 決算期は異なるが、アウトソーシング(12月期決算)は国内の技術系アウトソーシングが好調を維持した結果、売上高は3667億円(同1.5%増)、営業利益は143億円(同6.5%減)となった。一方、テクノプロ(6月期決算)は中間決算(20年7~12月)で売上高794億円(前年同期比0.5%増)、営業利益96億円(同17.7%増)と健闘。ワールドインテックを擁するワールドホールディングス(12月期決算)も基幹ビジネスの人材・教育分野が好調だったことから、売上高は1435億円(同5.3%増)、営業利益62億円(同32.1%増)となった。

 通期見通しについては...


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