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2022年4月18日

「解雇無効時の金銭救済制度」、通算7年の有識者議論

法制化への気概に欠ける政府、漂う手詰まり感

 「解雇無効時の金銭救済制度」は必要か否か――。経済界と労働界で容認論と不要論が真っ向からぶつかる労働政策の長年の課題だ。硬直化する雇用の流動を促す方策として待望される一方で、「カネでクビ切り」との批判も強く、賛否が割れる。「労働者に透明で公正な労働紛争解決の選択肢を増やす」という切り口で法制化を目指している政府だが、2015年から2つの有識者検討会で通算7年の月日を費やしながらも出口は見えてこない。手詰まり感が漂う中、これまでの経過をたどりながら「金銭救済制度」の本質を探る。(報道局)

 さかのぼること2003年。「日本の紛争解決システムが不透明」との指摘を理由に、政府の複数の会議体が断続的に議論してきたテーマだ。制度化の流れをつくれずにいた中で、安倍政権下の内閣府・規制改革会議(当時)が2015年3月、「労使双方が納得する雇用終了の在り方」と題する意見書を提出。法制化に向けてこう着する議論を揺り動かした。同じタイミングで政府は、「日本再興戦略改訂2015」の中に、「透明・公正でグローバルにも通用する解決システムの構築に向けて議論する」ことを盛り込み、閣議決定した。

 これを受ける格好で15年10月に設けられたのが、厚生労働省の有識者会議「透明かつ公正な労働紛争解決システム等の在り方に関する検討会」(労働紛争解決検討会)だった。委員は有識者、使用者側、労働者側、紛争処理に携わる弁護士など22人が集まる大所帯のテーブルで、計20回にわたる議論を経て17年5月に報告書策定にこぎ着けた。委員の立場と見解はさまざまで、報告書では法制化への道筋を明確に示せず、金銭解決は「選択肢として考え得る」というトーンに留まった。

sc220418.jpg 本来の流れであれば、この「労働紛争解決検討会」の報告書をたたき台に法制化の最終関門である労働政策審議会へと進むのだが、労政審は報告書内の「選択肢として考え得るという視点から法技術的な更なる検討が必要」との一文を踏まえ、再び検討会の設置を厚労省に要請。18年6月に発足したのが、専門家6人による「解雇無効時の金銭救済制度に係る法技術的論点に関する検討会」(解雇時の金銭救済検討会)=写真=で、約4年の月日を経て今年4月に報告書提出にこぎ着けた。

 多様な働き方と柔軟な労働移動を可能とする方策として法制化を実現したい政府だが、ハレーションを起こすテーマとあって次第に気概を失い、実態としては宙に浮いたまま。7年越しで有識者から2度目の報告書を受け取ったいま、厚労省は労政審でどう取り扱うか、政府・与党の意思を探りながら模索している。

「不当解雇の正当化は断じて認めず」連合談話

 「解雇無効時の金銭救済制度」の法制化が進まない理由は、労働者側の根強い反対を政府が押し切れずにいるためだ。経済界は、新たな制度創設について...


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