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2022年7月11日

「コロナ前」に雇用回復も

「量から質へ」課題は山積

 国内の雇用情勢は主要統計を見る限り、ほぼ「コロナ前」に戻った。業種によっては再び人手不足となり、賃金の上昇圧力が強まっている。しかし、元々賃金水準が低かったうえに、今春から本格化した物価上昇が賃金上昇を打ち消しており、「低賃金下の完全雇用」という"日本病"の様相を呈している。(報道局)

 5月の主要な雇用統計は、すでにコロナ前に回復している。有効求人倍率は1.24倍で、20年4月の1.31倍に近付きつつある。完全失業率も2.6%で、やはり20年4月の2.6%に並んだ=グラフ。 

sc220711.png 就労数も増えている。5月の雇用者は6052万人で、ピークだった20年3月の6065万人に近付いており、逆に完全失業者は180万人と、20年4月の178万人と並ぶまで減少した。さらに、正規・非正規の区別で見ると、5月の正規従業員数は3620万人、非正規従業員は2097万人で、正規が20年4月の3579万人を上回り、非正規は20年2月の2167万人を下回っている。コロナ禍で非正規労働者の失業が一時的に増えたのは間違いないが、リーマン・ショック時のような大量の失業者は生まれず、むしろ正規に移行した非正規も多かったことがうかがえる。

 これは政府が雇用調整助成金などの適用拡大を通じて、企業側に再三にわたって「雇用の維持」を要請したことが大きい。企業側もコロナの間は他社への出向や自宅待機の休業者を増やすなどして、解雇だけは避ける方針で臨んだ。ただ、学生・主婦のアルバイト、非正規の高齢者らは失業の波をかぶり、そのまま求職活動をしない「非労働力」になっている人が今も多いとみられる。

 その一方で、3月下旬に感染対策の行動制限が全廃され、長期間の営業制限を余儀なくされてきた飲食、宿泊、旅行など、対面型サービス業の採用活動が活発化したことから、パート・アルバイト市場の時給は急上昇している。リクルートによると、5月は1123円(前年同月比2.8%増)と過去最高を更新し、その中心となっているのはフード系(同4.6%増)や事務系(同4.5%増)。ディップの調査でも5月は1222円(同9.1%増)の過去最高を付けている。ここまで上がるのは、コロナ前まで「主要戦力」だった国内外の学生アルバイトが戻ってこないのも大きな要因であり、今後さらに上がりそうな情勢だ。

 このように、労働市場は"量的"にはコロナ前に戻ったものの、今後の課題は"質"の底上げ、低賃金からの脱却になる。日本の低失業率は低賃金の裏返しでもあり、失業率を上昇させることなく賃金を上げるには、労働生産性の向上しかない。現在の賃金水準のままでは、物価上昇率が2%程度で推移しても実質賃金はマイナスになる可能性が高いからだ。

テレワーク、ジョブ型雇用の定着がカギ

 労働生産性を上げる方法については、これまで官民で多種多様な試みが行われてきたが、決め手となる手法はまだ開発されていない。例えば、テレワークがその典型例だ。コロナ禍で多くの企業がテレワークを否応なく導入したものの、...


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