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2023年4月10日

「地域格差是正」の狙い、奏功するか

最賃のランク分け、4から3に再編成

 厚生労働相の諮問機関、中央最低賃金審議会(藤村博之会長)がこのほど、最低賃金(最賃)引き上げの目安を示すランク分けを、従来の4区分から3区分に変更することを決めた。今年10月から実施される予定だが、これによって地域間格差が縮小し、全体の賃金アップの底上げにつながるかどうか注目される。(報道局)

sc230410.png ランクの変更は1978年の現行方式となって以来初めて。従来のランク分けは、地域ごとの賃金水準などを踏まえて、最も高い東京都など6都府県をA、京都府など11府県をB、北海道など14道県をC、沖縄など16県をDに4区分していた。新区分では、Aランクは従来通りだが、BランクとCランクにDランクから福島、島根、愛媛の3県を加えた28道府県をまとめて新Bランクとし、Dランクの残りの13県を新Cランクとした=表

 改正の中心は旧Bランクと旧Cランクの再編成だ。ランク分けは各都道府県の賃金水準をメーン指標に決めているが、近年の労働人口の減少などに伴う地方の人材不足により、地域格差が拡大傾向にあることから、区分の見直しを通じて格差拡大に歯止めをかけることを主眼とした。

 検討を進めてきた同審議会の「目安制度の在り方に関する全員協議会」が6日に出した報告書では、ランク区分の見直しの根拠とした「1人当たりの県民所得」など最新19指標の試算も公表。これらを合わせた総合指数を算出した結果、東京=100とすると、神奈川=89.2、大阪=86.6と続き、下位は青森の69.0、沖縄の68.5となった。東京都と沖縄では1.46倍の開きがあった。

 新区分では所得水準だけでなく、労働者数なども重視して全体の最賃アップを図ったもので、AとBを合わせると労働者数全体の90%程度になるとみられることから、従来区分より底上げ効果が高まると期待されている。ただ、新Bランクに編入された旧Dランクの3県などの企業は、従来より高い水準の最賃アップを求められる可能性があることから、実施から数年程度は厳しい人件費対策を迫られることも予想される。

 最賃は従来、毎年夏に同審議会内の目安小委員会が4地域ごとの引き上げ目安額を提示。それを受けて各都道府県の審議会が決定し、10月ごろから順次実施している。政府はアベノミクス(安倍政権の経済政策)の一環として、かねてより最賃の大幅引き上げに積極的で、毎年3%超の引き上げを主導してきたが、それは現政権も踏襲している。22年度の場合、全国平均の引き上げ額は31円、引き上げ率3.3%で、最高は東京都の1072円、最低は沖縄県など10県の853円となった。

 一方、報告書では目安小委員会の非公開審議について、「議事の公開」と題して言及。「目安審議における議論のプロセスが見えづらい」として、取材メディアや地方の審議会などから「密室審議ではないか」などの批判も多かったことから、「データに基づく議論の結果をより丁寧に記載し、プロセスをできるだけわかりやすく示すことで、審議の透明性や納得感を高めることが重要」としたものの、目安審議自体の公開には踏み切らなかった。

 最賃は法律による"縛り"があることから、非正規労働者らに対する賃上げ効果はかなり高いが、「上げ幅が大き過ぎると失業増を招く」といった指摘も根強い。ただ、近年は慢性的な人手不足によって、パート、アルバイト、派遣などの労働者の時給は最賃を上回るペースで上昇が続いており、働く側にとって賃上げ環境は追い風が吹いている。

持続的賃上げには生産性向上が不可欠

 最大の問題は、正規労働者を含む日本の賃金水準の国際的な低さ。バブル崩壊以後のデフレ経済の過程で、...


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