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2023年8月 7日

見通し困難な「賃金と物価の好循環」

いつ転換?実質賃金のマイナス

sc230807_2.png 昨年から続いている物価と賃金の"せめぎ合い"は今年になっても続き、前半は物価上昇が賃金上昇を上回って推移している=グラフ。今春闘では官民挙げて「物価と賃金の好循環」の実現に向けて賃上げの大合唱となったが、「好循環」はまだ形になって表れていない。このまま国民生活の水準低下が続けば、今秋の臨時国会で政府の政策効果が問われかねない事態も予想される。(報道局)

 最も注目される指標である厚労省の毎月勤労統計調査によると、労働者に支払われる現金給与総額の伸び率から消費者物価指数(CPI)伸び率を引いた実質賃金は、昨年4月以降、今年5月まで14カ月連続でマイナスが続いている。昨年2月のロシアによるウクライナ侵攻が発端となり、世界的に原油などの資源が高騰したためだが、日本の場合は円安も加わって輸入物価が上昇したことも物価の上昇要因となった。

 政府はガソリン価格や電気代などの高騰を抑制する緊急対策を講じる一方、企業に賃上げの要請を繰り返した。企業側もそれに応じ、今年の春闘の賃上げ率は3.58%(連合)、3.99%(経団連)、3.60%(厚労省)など、どの調査でも前年までの2%台から大きくハネ上がった。 

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初の1000円台に乗せた最賃だが=7月28日、
中央最低賃金審議会

 しかし、昨年後半から物価上昇のテンポが速まり、今年1月には5%という高い上昇率を記録するなど、それ以降も4%台を上下する水準で推移している。シンクタンクなどでは昨年4月からの物価上昇が一巡することから、「今年4月以降の上昇率は下がる」との予想も根強かったが、予想は裏切られた。総務省のCPI(生鮮食品を除く総合)では6月が3.3%と"高止まり"したままで、最新数値の7月東京都区部(速報)も3.0%となり、2%台までは下がっていない。

 ただ、現在の物価上昇は日銀が目標にしてきた「2%」ラインを超え、長年にわたって手足を縛られてきた金融政策の変更を促す要因になることから、妥当な水準とみられる。物価上昇も、例えば人件費や物流費などのアップを製品・サービス価格にスムーズに転嫁できれば、大きな問題にはならない。要はそれを上回る賃金の上昇があればいいわけだが、今年の賃上げが物価上昇を上回るかどうか、今のところは微妙な情勢となっている。

 今回の春闘は、大企業に限れば3%後半で決着しており、今後の物価上昇を上回る水準に落ち着いた可能性が高いものの、これが中小企業にまで広く浸透するかどうかは予断を許さない。その意味で、今年の最低賃金(最賃)が4.3%(41円)増の1002円を目安とすることになった点は、最賃周辺の水準で仕事をしている労働者には朗報であり、春闘と合わせて中小企業の賃金水準の底上げに寄与することは間違いないとみられる。

「生産性の向上」が不可欠

 賃金の底上げが今年だけの一時的な現象でなく、毎年、継続して行えるかどうかが最大の課題だ。連合も「賃上げは1年で終わるものではなくて、継続をしていかないと意味がなく、来年にもつなげていきたい」(芳野友子会長)と先を見据えてはいる。それには生産性の向上が欠かせず、...


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