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2025年5月19日

人材ビジネスは好調を維持、3月期決算

激化する人材争奪戦、進む高度化の先行投資

sc250519.jpg 大手人材ビジネス企業の2025年3月期決算が出そろった。深刻化する企業の採用難と人手不足を背景に業績を伸ばす企業が相次いだが、人材の質向上に向けた先行投資がかさんで減益となった企業も目立つ。一方、「トランプ関税」など世界的に高まる不確実要因には、ほとんどの企業がまだ対応していない。(報道局)

 業界トップのリクルートホールディングス(HD)は、米欧の人材需要が減少したものの、国内需要が堅調。HRテクノロジーは主力のインディードがAI活用による機能向上などで回復した。来年3月期も海外求人需要の減少を見込んで減収を予想しているものの、重視する経営指標の「調整後EBITDA」(営業利益+減価償却費など)は前期比2.7%増の6970億円と過去最高を見込んでいる。

 パーソルHDは、国内が人材派遣・人材紹介とも堅調で、海外も豪州での派遣が堅調だったことから、営業利益、当期利益とも過去最高。来年3月期も最高益の更新を見込んでおり、調整後EBITDAは同10.4%増の865億円と強気の予想を発表した。

 ヒューマンHDは、派遣をはじめ全部門で売り上げが伸び、全体の売上高は同4.6%増と1985年の創業以来、初の1000億円を突破した。来期も同3.3%増の1036億円を予想している

 一方、パソナグループについてはベネフィット・ワンの売却、大型受注案件のピークアウトなどで大幅な減収減益を見込んでおり、大阪・関西万博出展に伴う関連費を特別損失に計上したことから、5月期決算は最終赤字となる見込みだ。

 技術系の製造派遣・請負もおしなべて好調が続く。正社員エンジニア派遣のメイテックグループHDは、4年連続の増収増益で過去最高を更新し続けている。ただ、エンジニア不足で人材の争奪戦は激しさを増しており、期末の技術者の在籍者数はメイテック、メイテックフィルダーズともに昨年を下回った。今年も、エンジニア確保が最大の課題となりそうだ。

 NISSOHDも、売上高を上場来初の1000億円台に乗せ、営業利益も最高となる好調ぶりだったが、自動車部門の期末在籍者数が減少。「トランプ関税」や日産自動車の大型リストラなど、今年は自動車部門への影響が注目される。UTグループは2社が新規連結となったほか、ベトナム事業の回復などによって技術者が大きく増えた結果、売上高は過去最高になった。nmsHDは新規受注の立ち上げなどで増収となったものの、前社長の「不適切支出」2億4400万円を特損計上するなど、本業以外の部分でガバナンス体制が揺れている。

 一方、決算期の異なるアウトソーシング(24年12月期)は24年3月、創業者の土井春彦名誉会長が退任、MBOで上場廃止となったため、業績開示はしていない。テクノプロHD(6月期決算)は技術者が増えたことから、中間決算(24年7~12月、IFRS)の売上収益1184億円(同9.7%増)、営業利益151億円(同21.7%増)と好調を維持。ワールドインテックを擁するワールドHD(24年12月期)も「複数事業によるポートフォリオ」政策が奏功し、売上高2422億円(同13.3%増)となったが、営業利益86億円(同17.1%減)は不動産事業の物件不足などで減益となった。

 人材ビジネスの好調の陰で、ジワジワ影響を及ぼしているのが国内労働市場の一段のひっ迫。慢性的な人手不足によって、多くの企業で"求人疲れ"が顕在化している。厚生労働省によると、企業側の有効求人数は24年2月の約254万人をピークに低下傾向が続いており、最近は230万人~240万人台で推移。同様に、有効求職者も24年5月の約207万人をピークに下がり続け、今年3月は約190万人となっている。どちらも減少が続いた結果、有効求人倍率も1.24~1.26倍の狭い範囲で動いており、これが当分続きそうだ。

 総務省の労働力調査からも同じ傾向が出ており、完全失業率はここ2年ほど2.6~2.4%の小動きが続き、実質的な完全雇用状態にある。雇用者は正規が3600万人台をほぼ横ばいで推移。非正規は2100万人台でジワジワ増加しているが、これは高齢男性の「労働参加」が主要因であり、働き盛りの世代で非正規が増えている訳ではない。

 そうした状況下で、派遣スタッフの稼働数は伸びている。日本人材派遣協会の統計によると、24年10~12月期の実稼働者数は約43.2万人(前年同期比2.9%増)だった。しかし、22年の7%台、23年の5%台から、24年は3.2%と明らかに伸び率は鈍化しており、数量頼みの経営が限界に差し掛かっていることは確かだ。そのため、スタッフのスキルアップに重点を置き、付加価値を高める方向が主流になっている。

転職希望者は増える一方だが...

 一方、人材紹介事業は一種の「転職ブーム」が起きていることもあって...


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