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2025年12月15日

連合が「2026春闘」の賃上げ目標掲げる

物価上昇のなかで3年連続の「5%台」目指すが...

 国民生活の水準が下がり続けている。物価上昇が賃金アップの比率を上回っているため、手取りの体感値である実質賃金が下がっている。連合は11月、「2026春闘」の賃上げを「5%以上」とする目標を決めた。3年連続の"高水準"になるが、過去2年間の実績を見る限り、物価高には勝てないまま。連合だけの努力では限界が見えている。(報道局)

 来年の連合の賃上げ目標は3年連続の「5%以上」だが、格差是正に向けて「中小組合は6%以上」、「有期・短時間・契約などの労働者は7%」と目標を"分割"し、全体の実質賃金を「1%上昇軌道」に乗せるとした。問題の所在を明確にした点では評価できる。

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東京・有楽町で持続的な賃上げを訴える連合本部
=2025年3月6日

 芳野友子会長は「2年連続で5%台の賃上げを実現できたものの、私たちの暮らしはゆとりを感じるような状況に至っていない」と指摘し、「格差是正に向けた取り組みを強化するため、基盤整備としてサプライチェーン全体で生み出した付加価値の適正配分、適切な価格転嫁・適正取引の推進をしっかりと訴えていく」という趣旨を述べている。

 その直前に開かれた政労使会議では、高市首相が「昨年とそん色のない賃上げ」「物価上昇に負けないベア」を労使に要請し、経団連も基本的に同意。三者の目標は一致を見せ、前年までの春闘と同じ構図となっている。連合の3年連続「5%以上」の目標設定は、それらを背景にした強気の内容と言える。

 しかし、こうした目標とは裏腹に、現実の賃上げをめぐる環境はこれまで以上に厳しさを増している。連合の集計によると24年は平均5.10%、25年は同5.25%と2年連続5%台の大幅賃上げを勝ち取った。政府、経営側とも大幅賃上げに対する姿勢を明確にして、側面支援してきたことが大きな要因だった。ところが、大幅な賃上げ以上に物価上昇がそれを上回る状態は収まらず、実質賃金はマイナスのまま。厚生労働省の毎月勤労統計調査によると、月々の給与(現金給与総額、名目賃金)は賃上げ効果もあって21年以降はプラスが続いているものの、消費者物価上昇分を差し引いた実質賃金は22年以降の長期マイナスが続いており、今年は1月から10月まで10カ月連続のマイナスという事態になっている。

 大幅賃上げにもかかわらず、実質賃金がプラス転換できない最大の理由は、賃上げ効果が大企業に偏り、中小・零細企業にまで及んでいないためだ。同調査は従業員5人以上の企業を対象にしているが、同30人以上企業に限ると今年はマイナス続きながらも、そのマイナス幅は全体より0.5~0.2ポイントほど小さい。

 日本商工会議所が発表した「中小企業の賃上げ調査」によると、4~9月の賃上げ実施済み・予定企業は82.0%の高さだったが、賃上げ額になると月額1万3183円で賃上げ率は4.73%にとどまった。さらに、従業員300人以下企業になると賃上げ率は4.47%、同20人以下企業になると4.02%に下がり、連合の数字をかなり下回ることが鮮明になっている。

 中小・零細企業にとって、賃上げは「人手不足」下における人材確保のための有力な手段にはなるが、業績がそれに見合わず、資金的に余裕のない実態を示す結果となっている。全雇用者の7割を占める中小・零細企業の賃上げが不十分だと、全体の実質賃金のプラス転換が困難なことは明白だ。

 政府もこの点はかなり意識しており、最低賃金の大幅引き上げを誘導。23年は43円、24年は51円、25年は66円(各年とも加重平均)と年々引き上げ額を増やした結果、25年の平均は1121円となり、1000円以下の都道府県は姿を消した。人材流出を危惧する"低賃金"自治体の大幅引き上げが目立ち、引き上げ競争の様相を呈している。

 また、中小企業の多くが大企業の下請けで、相対的な力関係が弱いことから、物価上昇に伴う製品価格の転嫁が十分進んでいない実態も明らかになっている。このため、独占禁止法や改正下請法などを駆使して、大企業による不当な"下請けいじめ"を阻止しようと、企業名の公表などを通じてスムーズな価格転嫁ができる環境を作っている。

物価高の"元凶"、円安是正に動かない政府・日銀

 しかし、こうした政策にも限度があることは、数字の上からも明らかだ。現在の物価上昇はロシアのウクライナ侵攻をきっかけに原油価格が急騰したことに端を発しているが...


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