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2021年1月28日

「賃金のデジタル払い」に慎重論 労働者側「導入ありき」に抗議、労政審分科会

 キャッシュレス化の促進や多様な賃金支払いのニーズに対応する「賃金のデジタル払い」について、厚生労働省は28日、労働政策審議会の労働条件分科会(荒木尚志分科会長)に運用する場合の課題などを提示した=写真。制度化の検討に入る前に労働者側は、一部報道で今春解禁と報じられたことを指して「労働者保護の観点から導入ありき、スケジュールありきは認められない」と強く抗議。厚労省は「検討はスタートしたばかり。プロセスを踏んで丁寧に進める」と答えた。

n210128.jpg 企業が従業員の希望に応じて、銀行口座を介さずに給与の全部または一部を決済アプリなどに振り込むことを可能にするか否かを検討するもの。厚労省はこの日、銀行などの「金融機関」と、金融庁に登録しているキャッシュレス決済サービスを行う「資金移動業者」を比較し、「資金保全」「不正引き出しへの対応」「換金性」などの観点から導入する場合の課題を挙げた。一方で、これらの打開策として、約80社ある業者の中から安全性の高い業者を選定する方策なども示した。

 これを受けて、現場の運用・実務面での議論が展開されたものの、使用者側からも「当初は銀行口座を開きにくい外国人労働者の利便性に寄与する制度と聞いていたが、随分と範ちゅうが広がっている感じを抱く」との指摘も挙がり、制度化に向けた検討は一定の期間を要する模様だ。

 「デジタル払い」を認める場合は、「通貨で直接、労働者に全額支払う」と定める労働基準法第24条の省令改正が必須。現在、例外で認めている「銀行」に「資金移動業者」も加える必要がある。

連合が抗議の会見

 連合は28日、労政審労働条件分科会の直後に記者会見を開き、今春に「賃金のデジタル払い」が制度化される旨の報道があったことを批判。「企業が労働者に支払う賃金は最も安全なルートでなければならない」とし、資金移動業者が銀行に比べて安全レベルが低く、法整備もまだ不十分であるとの認識を示した。

 そのうえで、懸念点として(1)資金移動業者が破綻した場合、払い戻しまで時間がかかる(2)銀行の預金者保護法のような共通の保護規定がない(3)口座への滞留(預金)を前提にしておらず、検討が不十分――など7項目を挙げた。

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