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2022年3月26日

「賃金デジタル払い」を巡る議論、労政審で約1年ぶりに再開 厚労省、早期の制度化目指す

 労働政策審議会労働条件分科会(荒木尚志分科会長)は25日、キャッシュレス化の促進や多様な賃金支払いのニーズに対応する「賃金デジタル払い」のあり方について議論した=写真。厚生労働省は昨年4月、制度設計案の骨子を同分科会に示したが、労働者側が決済アプリを扱う資金移動業者の安全性などを指摘して導入に強く反発。"冷却期間"を経て、約1年ぶりの再開となった。政府は昨年6月に閣議決定した成長戦略フォローアップで「2021年度内の制度化」を掲げているが、解禁は22年度に持ち越された。 

n220325.jpg 「賃金デジタル払い」は、企業が労働者の希望に応じて、銀行口座を介さずに給与の全部または一部を決済アプリなどに振り込むことを可能にする仕組み。実現するためには、「通貨で直接、労働者に全額支払う」と定める労働基準法第24条の省令改正が必要で、現在、例外で認めている「銀行」に「資金移動業者」を加えなければならない。金融庁に登録しているキャッシュレス決済サービス事業者は2020年12月現在で80社あり、大手では「PayPay(ペイペイ)」や「LINEペイ(ラインペイ)」など。解禁する場合には厚労省が安全性などの基準を設けて指定する方針だ。

 厚労省が昨年4月に示した制度設計案は、課題解消に向けた仕組みや対応などが具体的に盛り込まれていたが、着地点を探れないまま時間切れ。荒木分科会長は「労使間の意見の隔たり、委員間での理解の相違が残っている」と述べ、厚労省に今後の進め方を工夫するよう求めていた。

 この日、厚労省は新たな検討項目を含めた制度案を説明。それによると、資金移動業者の活用を企業が労働者に強制しないことが大前提で、事業者は厚労相が指定。厚労相は指定を取り消すこともできる。指定の要件として、(1)債務履行が困難になった場合に、債務を速やかに保証する仕組みを有している(2)不正取引などが生じた場合に損失補償をする仕組みを有している(3)現金自動支払機(ATM)を利用することで口座への資金移動にかかる額(1円単位)の受け取りができ、少なくとも毎月1回は手数料負担なく換金できる(4)業務の実施状況や財務状況を厚労相に報告できる体制を有している(5)業務を適正・確実に遂行できる技術的能力を有し、社会的信用がある――の5つすべてを満たしていることを挙げた。

 そのうえで、焦点となっている「労働者の同意」や「資金移動業者の指定要件」「指定・取り消し」について、新たな検討材料を加えた。

 これに対し、公労使委員は...


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