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2020年5月 7日

小岩広宣社労士の「人材サービスと労務の視点」19・新型コロナウイルスの雇用調整助成金の特例措置①

Q 雇用調整助成金の特例によって助成率が100%になったと聞きました。具体的にはどのようなケースに適用されるのですか。

koiwa.png 雇用調整助成金については第15回でも触れましたが、新型コロナウイルス感染症への対応としていくつかの特例措置が置かれ、目まぐるしく情報が更新されています。4月25日に一定の要件の場合に助成率を100%にするという方針が示されましたが、5月1日に厚労省から特例措置の拡大について正式に発表があり、リーフレットなどが公表されました。具体的には、以下のケースが該当します。

(1)中小企業が都道府県知事からの休業要請を受ける等、一定の要件を満たす場合 は、休業手当全体の助成率を特例的に100%とする。
(2)(2)に該当しない場合であっても、中小企業が休業手当を支給する際、支払率が60%を超える部分の助成率を特例的に100%とする。

 (1)は新型インフルエンザ等対策特別措置法等に基づく要請により、休業又は営業時間の短縮を求められ、実際に休業等を行っているケースです。この場合は、①労働者の休業に対して100%の休業手当を支払っている、②上限額(8330円)以上の休業手当を支払っている(支払率が60%以上)のいずれかに該当する必要があります。例えば、該当する事業主が、平均賃金8000円(1日)の場合に、その100%の8000円の休業手当を支払ったときには、8000円が助成されます。

 (2)は、中小企業が解雇等を行わず雇用を維持し、賃金の60%を超える休業手当を支給する場合に、60%を超える部分について助成率が特例的に100%となります。例えば、平均賃金8000円(1日)の場合に、その80%の6400円の休業手当を支払ったときには、60%を超えた部分について100%が助成されます。具体的な助成額は、4320円(休業手当の60%部分の90%)+1600円(60%を超える部分の全額)=5920円となります。

 「100%支給」という報道などを聞いて、すべて休業手当の全額が助成されると勘違いしている人も少なくありませんが、実際の制度はこのように複雑です。もし計算式に迷ったときは、上のようなシンプルな例にもどって理解してほしいと思います。


「新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえ中小企業の皆様への雇用調整助成金の特例を拡充します」(厚労省リーフレット)


(小岩 広宣/社会保険労務士法人ナデック 代表社員)

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