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2015年6月 8日

成立が確実視される派遣法改正案と厚生労働関連の国会審議、進展状況

8月上旬までの大幅な会期延長を前提に動く国会

is150608.JPG 第189回通常国会は、8月10日前後までの大幅な会期延長を前提に展開されている。来年は7月に参院選(半数改選)があるため、今国会だからこそできる思い切った延長幅だ。衆院では注目度の高い安全保障関連法案の審議が5月下旬からはじまり、一方で6月に入って日本年金機構(厚生労働省所管)の個人情報流出問題が発覚するなど、残り“2カ月間”の国会がバタついている。
 時々刻々といった情勢にある中、先週末に成立の算段が概ね整った労働者派遣法改正案を中心に、厚労省および雇用・労働関係の審議状況を時系列のダイジェストで整理する。(報道局)

派遣法改正案は参院を含め6月がヤマ場

 政府が今国会に提出した厚生労働省関係法案は9本、他省庁の所管・共管の雇用・労働関係2本の計11本だ。進展状況は、前半が派遣法案、後半がその他の関係法案に大別して記述する。

【労働者派遣法改正案】
 政府が提出している中で与野党対決法案とされ、また、「重要広範議案」に指定されている。この場合、成立までに必要な主な手続きと順番は、
①衆院本会議での趣旨説明と各党各派代表者による質疑
②衆院厚生労働委員会での審議と採決による可決
③衆院本会議での採決による可決(衆院通過)
④参院本会議での趣旨説明と各党各派代表者による質疑
⑤参院厚生労働委員会での審議と採決による可決
⑥参院本会議での採決による可決(法案成立)
の6つが成立までの「節目」となる。

 まず、現状は5月12日に①を踏まえ、5月末時点で②の終盤まで進んでいる。政府・与党は、野党3党が対案的法案として5月26日に提出した「同一労働・同一賃金法案」(通称)も並行して審議するという慎重な進行に努めている。近く、与党の自民、公明による「同一労働・同一賃金法案」(一部項目を追加)提出され、可決となる方向だ。
   
【5月12日】衆院本会議:塩崎恭久厚労相が提案理由と趣旨説明をし、与野党5議員が代表質問。
【同13日】衆院厚労委:塩崎厚労相が提案理由と趣旨説明。
【同15日】同:与野党9委員が質疑。野党は厚労省が国会議員への事前説明に使用した資料に不適切な表現があるとして、審議には臨むも「一般質疑」の姿勢で出席。
【同20日】同:与野党8委員が質疑。厚労省の不手際を問いただす内容が多く、改正案の内容自体に踏み込んだ実のある議論とは程遠い質疑となった。
【同27日】同:与野党13委員が質疑。質疑の方向性は大きく2つに分類され、一つは改正法案の内容に関する確認や指摘、課題などについて。もう一方は厚労省の不手際を繰り返し問いただす「入り口論」に終始。また、野党3党が26日に提出した「同一労働・同一賃金法案」の趣旨説明を提出者代表が行った。
【同28日】同:「参考人招致」(参考人の意見陳述)を実施。人選は事実上、与党(自民・公明)と民主、維新、共産がそれぞれ行い、招致された5参考人がそれぞれの知見と経験、研究などを基に意見陳述した後、5政党の委員が参考人から意見を聴いた。
【同29日】同:政府提出の派遣法改正案と、野党が共同提出した「同一労働・同一賃金法案」を同時並行で審議。約7時間にわたる審議全体を通してみると、政党としてのスタンスに一定の方針はありながらも、問題意識やこだわる部分は個々の委員の信念や経験に基づく場面が際立った。
【6月2日】同:2度目の参考人招致を実施。4参考人から5政党の委員が見解や意見を聴いた。
【同3日】同:日本年金機構の個人情報流出問題で集中審議。
【同5日】同:2回目となる日本年金機構の個人情報流出問題の集中審議。

【同X日】同:採決で賛成多数で可決、本会議を経て、参院へ送られる予定。

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女性活躍推進法案が自公民の3党修正法案で衆院通過

 派遣法改正案を除く、関連10本は下記の通り。
(1)戦後70年、戦没者の妻らに対する特別給付金支給法改正案
(2)国民健康保険法改正案
(3)厚労省所管の独立行政法人改革推進法案
(4)勤労青少年福祉法改正案(若者雇用促進対策法案)
(5)社会福祉法改正案
(6)医療法改正案
(7)労働基準法改正案
(8)確定拠出年金法改正案
(9)女性活躍推進法案・新法(内閣官房・内閣委員会)
(10)外国人技能実習に関する新法(厚労、法務両省共管・法務委員会)

 (1)3月31日に成立。(2)5月27日に成立。(3)4月24日に成立。(4)参院先議で4月17日に可決・通過。衆院では6月8日時点で審議入りしていない。(5)~(8)は衆参ともに未着手となっている。

 (9)は、衆院本会議で6月4日、自民と公明、民主の与野党3党が提出した修正案を賛成多数で可決、参院に送付した。今後は参院内閣委員会で審議が始まる。修正案は、政府案の法律の目的に「男女の人権が尊重される社会の実現を追加する」ことなどが盛り込まれている。

 (10)は、認可法人の技能実習機構(仮称)を新たに創設し、「管理監督体制の強化」と「制度拡充」という両面を進めるのが法案の柱。実効性が急務だが、未着手の状態だ。

 

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