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2015年6月15日

労働者派遣法改正案、成立と施行までに向けた課題

本質論議を妨げる、民主の一線を越えた乱闘戦術

 規制のかけ方を抜本的に見直す労働者派遣法改正案は、衆院本会議と同厚生労働委員会で通算10回、合計約40時間(2回の参考人招致は除く)にわたる審議を経て、12日に一応「終結」した。民主党の議事進行阻止を狙った同日の乱闘戦術は、改正法案に対する賛否を含めたマスメディアの本質的な報道を打ち消すための“報道かく乱作戦”との勘ぐりさえ抱かせる光景だった。

 政府は19日までの衆院通過の方針を変えていないが、その間、国会全体の正常化を念頭に柔軟な議事運営を心掛ける模様だ。6月下旬は審議の舞台が参院へ移る公算が高い。改正法案の今後の日程感や課題について整理する。(報道局長兼労政ジャーナリスト・大野博司)

目立つ「矮小化した議論」と、暴力行為を「是認」する野党第一党

is150615.jpg 労働法制全体の閉塞感や超高齢化の人口減社会という現実を展望した時、「いま実施すべき政策は何か」との大局的観点に立ち、政府はその「入り口」として改正法案を提出している。労働者派遣法は制定から30年の間に、時代の変化や政治的変遷に翻弄され、継ぎ足しや場当たり的な政策変更で複雑怪奇な内容になってしまい、「交通整理」が不可欠な状態になっているからだ。

 今回の改正法案審議では、喫緊の対応として、悪質事業者の徹底排除に向けた厳格な規制のあり方や、法律や政省令と連動しない監督官庁の「行政通達」という継続性や一貫性に欠ける指導がもたらした問題など、現場感覚で浮き彫りにしなければならないテーマが山積している。しかし、維新の一部委員を除くと、与野党ともに現時点では概して「突き方」が浅い。つまり、極端な悪質事例の繰り返しばかりで、現場の実態や多様な働き方への本質議論に踏み込めていない。

 主語を「人なのか、受け入れ企業(派遣先)」なのか巧みに曖昧(あいまい)にして、「生涯ハケン」と「3年で首切り」という矛盾する懸念と課題を煽(あお)る表層議論にとどまっている。正社員を含むあらゆる形態で働く国民(有権者)に、政治家は聞こえの良い理想の社会だけを伝えるのが得意なようで、「世界環境は厳しさを増す。より、自己研さんとキャリアアップを積んでいきましょう」と直言できないのか。さらに、社会福祉の分野などでサポート、セーフティーネットを敷くべき事例と混同させた「矮小化した議論」も目立つ。

 そうした中で、衆院審議が大詰めの12日、政権の座にも就いた経験のある野党第一党の民主が「反対」姿勢を示すために選択した行動が、衆院厚生労働委員会における議事進行妨害である。これによって、賛否の理由や解説よりも、報道各社は視覚的に賑やかなシーンに引っ張られ、ある意味で同党の戦術は成功した感もある。

 その代償は小さくなく、委員長に対する暴力行為があったとして、衆院の懲罰委員会に掛けられたり、「傷害事件」に発展する可能性が否定できない暴走ぶりだった。しかも、民主の岡田克也代表が「場合によってはやむを得ない」と是認したことは、一般社会はもちろん、同党に政権交代を期待する一定の人たちに「ある種の重い不安と不信」を与え、広げてしまったことになる。

 無論、民主のみに対する一辺倒の批判は公平でない。いわゆる「10・1問題」ペーパーを巡る厚生労働省の不手際やちぐはぐな幹部答弁、要領を得ない政府答弁があったことも記しておきたい。

衆院成立に向けた今後の日程感と着眼点

 政府は、今国会(会期6月24日)の開会当初から想定していた8月10日前後までの大幅延長を、さらに1カ月ほど拡大した「異例の延長幅」に踏み切る構えも視野に入れ始めた。その狙いの本丸は…

 

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