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2020年5月25日

パワハラ防止法、6月施行

見通せない新型コロナの影響

 職場のパワーハラスメント(パワハラ)を防ぐ「パワハラ防止法」が6月から施行される。まず大企業から始まり、中小企業は2022年4月から。罰則規定がないため、実効性に疑問が持たれているが、日本の企業文化を変えるきっかけにはなりそうだ。しかし、ここに来て、新型コロナウイルスの感染拡大という"伏兵"が出現し、多くの企業はその対応に精一杯の状況だ。景気が悪化するとパワハラは増える傾向にあり、防止法がどこまで効果を発揮するか、極めて不透明なスタートになりそうだ。(報道局)

 昨年5月に成立した改正労働施策総合推進法(パワハラ防止法)では、パワハラを①優越的な関係を背景にした②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより③労働者の就業環境が害されるもの、の3要件を満たした場合と定義。この定義に基づき、厚生労働省がパワハラを6類型に分けた具体的なガイドラインを作成した。

 6類型は、身体的攻撃、精神的攻撃、人間関係からの切り離し、過大な要求、過小な要求、個の侵害の六つ。身体的攻撃例として「相手を殴ったり、物を投げつけたりする」こと。精神的攻撃では「人格を否定するような言動」で、「お前はバカか、死ね」といった罵倒が典型だ。

 人間関係からの切り離しでは、「これまでの仕事から外して、別室に隔離する」もので、いわゆる退職を強要する"追い出し部屋"を想定。過大な要求は「故意に能力以上の過酷な仕事を命じること」、逆に過小な要求は「故意に誰でもできる仕事をさせること」、個の侵害は「個人情報を職場にわざと広めること」などを想定している。

 ガイドラインに対して、企業側の困惑は大きい。例えば、「過大な要求」「過小な要求」では、繁忙期には仕事量が増え、当然、社員の負担も増える。能力の低い社員には、これまでより責任の軽い仕事をさせる。これらは業務を円滑に進めるうえで不可欠な措置だ。どこまでが「厳しい指導」で、どこからがパワハラか、線引きができないケースは多い。こうしたグレーゾーンを残したまま、見切り発車的な法施行となった。

sc200525.png しかし、職場のトラブルは年々増えており、その内容も変化している。厚労省が毎年公表している「個別労働紛争解決制度」の利用状況によると、最新版の18年度では民事上の延べ相談件数約32万件のうち、トップは「いじめ・嫌がらせ」の8万件余にのぼり、全体の4分の1を占め、解雇や労働条件ダウンなどを大きく上回っている=グラフ

 「いじめ・嫌がらせ」は09年度の約3万6000件から毎年急増し続けている。厚労省はこの中にはパワハラ事案がかなり多く含まれ、サラリーマンの過労自殺や精神疾患といった深刻な結果を引き起こす要因になっているとして、パワハラ防止法の制定につながった。

「新型コロナ→景気ダウン→パワハラ増加」の懸念

 ところが、施行直前になって、新型コロナウイルスの感染拡大が日本を襲い、国民生活や企業活動を大きく制限する事態が発生した。これがパワハラ防止にどう影響するか、極めて不透明な情勢となっている。

 最も懸念されるのは、生産停止や外出自粛によって、多くの企業が業績悪化に見舞われており...


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