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2021年4月12日

新型コロナ、緊急事態宣言から1年

感染拡大と経済回復のせめぎ合い

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、政府が昨年4月、1都3県(首都圏)に最初の緊急事態宣言を出してから1年が経った。その間、感染対策や経済回復などは、どこまで進んだのか。現実は、変異ウイルスの登場に伴う感染「第4波」の襲来と、好不況業種の二極化が進んでおり、感染と経済がせめぎ合う"神経戦"の様相を強めている。(報道局)

 昨年は、感染抑制に最も効果的な「3密」の回避に向けて、人流(人の流れ)がパッタリ止まったうえ、多くの企業がテレワークに移行したことなどから、飲食、鉄道や飛行機、宿泊、旅行などの業界を直撃して経済活動は急落。これらの業界を中心に、パート・アルバイトなどの非正規従業員が大量に雇い止めされ、新規求人もほぼストップした。

sc210412.png 厚生労働省の有効求人倍率は、昨年3月の1.40倍から下がり続け、9~10月には1.04倍の底を付けた。逆に、総務省の完全失業率は3月の2.5%から上昇を続け、10月には3.1%のピークを付けた。しかし、どちらの指標も11月以降は徐々に改善しつつあり、横ばいか一進一退の動きのまま現在に至っている=グラフ。リーマン・ショック直後の09~10年当時、求人倍率は0.5倍台まで下がり、失業率は5%台まで上がったことを考えると、今回はそれほどの悪化には至っていない。

 これには複数の要因があるが、最も大きいのはリーマン・ショックが世界的な経済ショックだったのに対して、今回は新型コロナという経済外ショックだった点だ。経済要因の場合は回復に時間が掛かるが、今回のような場合、感染が抑制されれば経済は急回復する。予防ワクチンの普及が「切り札」とされるのも、感染の抑制と同時に経済回復面への期待が大きいからだ。

 また、リーマン当時を反省して、今回は政府が関連業界団体に再三にわたって「雇用維持」を要請する一方、様々な対策を講じた点も大きい。売り上げを大きく減らした中小・個人企業を対象にした持続化給付金、社員に休業手当を支払った企業を対象にした雇用調整助成金(雇調金)がその代表だ。内閣府の試算では、これらの政策によって「失業率が最大3%分抑制できた」と"自画自賛"している。

 しかし、雇調金は助成率を徐々に引き上げて、事実上の"満額"補助にしたり、企業が休業手当を払わない場合は、政府が従業員に直接支払う特例措置を設けたりするなどの"大盤振る舞い"に出たことから、原資である雇用保険料の積立金が底を突いてきた。加えて、「生産性の低い企業まで温存させている」との批判も強まっており、5月以降は段階的に縮小する方針を打ち出した。

 企業のテレワークの定着や、政府・自治体の一連の支援策が奏功して、11月以降は両指標とも徐々に改善に向かっている。失業者数(原数値)は昨年初の150万人台から毎月増え続け、8月には200万人台を突破したが、11月から再び190万人台を上下しており、昨年より40万人前後増えたまま推移している。

 一方、失業増の裏返しで、非正規従業員の就業者は昨年よりも減少を続けており、今年2月は1年前より107万人も減った。そのうち新型コロナに直撃されている宿泊・飲食サービス業が46万人減と最も減少数が多く、失業者の増加分とほぼ重なる。厚労省の調査によると、新型コロナで解雇・雇い止めとなった人は4月7日時点で延べ10万人を超えた。もっとも、これはハローワーク経由の数に過ぎず、実際には10万人をかなり上回ると推測されているが、中には転職したり、職探しをやめたりした人もいるため、解雇・雇い止め後の実態は不明だ。

 これら業界の雇用回復には、感染が沈静化して人流が元に戻り、家庭にたまっている個人マネーが動き出すことが絶対条件になるが、ここに来て変異ウイルスの増加によって再び感染が急拡大している。大阪府や東京都などの大都市を中心にまん延防止等重点措置が相次ぎ適用されたことから、業界は再び厳しい状況に立たされており、雇用の先行き見通しも一段と不透明な状況になっている。

回復業種と停滞業種の二極化鮮明に

 日銀が1日に発表した3月の企業短期経済観測(短観)をみても、製造業の大企業の業況判断指数(「良い」割合から「悪い」割合を引いた数値)がプラス5となり、...


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