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2021年4月26日

◆経済トピックス◆3回目緊急事態宣言、4都府県に

「短期決戦」で雇用維持も正念場

 新型コロナは変異ウイルスによって感染が急拡大し、東京や大阪など1都3府県に対して、25日から3回目の緊急事態宣言が出た。予定期間は5月11日までの2週間余と短いが、GDP(国内総生産)の3割を占める地域で1年前の宣言に近い厳しい内容となったことから、経済への打撃は必至。これまで政府や自治体が支えてきた雇用がどこまで持ちこたえられるか、正念場を迎えている。(本間俊典=経済ジャーナリスト)

 今回の宣言は飲食店だけでなく、百貨店などの大型商業施設、テーマパーク、野球場などのイベント会場といった、「人流」抑制のために人の集まる施設全体に休業や営業自粛を求めている。企業には再び7割ほどのテレワークを要請した。1都3県を対象に、飲食店への時短要請が主だった1月の2回目の宣言より広範囲で厳しく、1回目の宣言に近い内容となった。また、酒類の提供の終日停止など、さらに踏み込んだ対応も求めた。

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百貨店も再び営業休止に

 2回目の宣言は3カ月近くに及んだが効果は薄く、解除後に関西で変異ウイルスが急拡大したのを受け、4月になって大阪府などにまん延防止等重点措置を順次適用したが、やはり効果が出なかったことから、政府は3回目の宣言に踏み切った。今回は医療体制のひっ迫が明らかになっているのに加え、7月からの東京オリンピック・パラリンピックも目前に迫っているため、厳しい内容で一気に感染を抑え込む「短期決戦」を目指す意図が読み取れる。

 今回の宣言を受けて、シンクタンク各社は経済予測を発表。大和総研は1カ月続く場合の実質GDPは0.6兆円のマイナスとなり、1~3月期に続いて4~6月期もマイナス成長になると予測。第一生命経済研究所はゴールデンウイーク(29日~5月5日)の7日間の消費支出を5.04兆円と弾き、昨年より少しは多いものの、コロナ以前の19年より2.6兆円程度少なくなると予測している。

 しかも、これらは、4都府県で2週間余という短期間に限定した試算値であり、感染が他県に拡大して宣言の対象も広がるような事態になれば、落ち込み幅がさらに膨らむのは必至だ。昨年4~6月期のGDPは前期比マイナス8.3%に落ち込み、7~9月期、10~12月期とプラス転換したが、今年1~3月期は2回目宣言によって同1.6%程度のマイナスに逆戻りしたとみられている。4~6月期もマイナスなら、2四半期連続のマイナスとなる。

 ここで最も懸念されるのが雇用だ。代表的な指標である有効求人倍率や完全失業率は昨年3月から急速に数値が悪化したが、10月ごろを底に徐々に回復傾向をたどっており、この2月の数値は有効求人倍率が1.09倍、完全失業率は2.9%に踏みとどまっている。少なくとも、08年のリーマン・ショック直後に比べて、雇用の悪化はみられない。

 この最大の要因は、コロナ禍の影響を直接受けている業種が飲食、宿泊、観光、旅行、運輸といった分野に限られ、自動車などの製造業や金融などの非製造業は「コロナ慣れ」とともに業績回復に努めてきたこと。このため、回復の度合いには二極化がみられるものの、雇用を大きくダウンさせるような事態は何とか避けられている。

雇調金頼みの雇用維持、そろそろ限界に

 また、リーマンの反省に立ち、政府が雇用調整助成金(雇調金)などの支給要件を大幅に緩和して、企業側に再三にわたって雇用の維持を要請したことも大きい。東京商工リサーチの調査では...


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