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2022年8月29日

◆経済トピックス◆物価上昇、これから“本番”の可能性

実質賃金のマイナス、いつまで続く?

 物価上昇が本格化している。総務省が発表した8月の消費者物価指数(CPI)の東京都区部中旬速報値では、総合指数(2020年=100)は102.7(前年同月比2.9%増)と3%に迫る伸びとなった。これは消費増税の時期を除けばバブルの影響が残る1992年以来の高い伸び。しかも電気・ガス代に加えて、食品価格など幅広い品目で上昇しており、この勢いが続くと賃金上昇の伸びを上回る可能性が高い。(本間俊典=経済ジャーナリスト)

 都区部のCPIは速報値として全国のCPIより約1カ月早く公表しており、全国の動きの先行指標となっている。8月は生鮮食品を除く総合指数も102.4(同2.6%増)となり、今年3月までの0%台から4月以降は一気に上昇幅を広げている。

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値上げラッシュが本格化

 8月の上昇の中身をみると、電気代が29.0%、ガス代が27.9%も上がっている。加えて、食料品も4.8%上がっており、中でも食用油が43.8%、タマネギが41.9%、マグロが21.0%、食パンが14.3%、輸入牛肉が10.2%と軒並み二ケタ上昇している。この中にあって、携帯電話料だけが政府の指示で14.4%下落している。これまでにも個別品目では多少の上下はあったが、今回のような値上げの"オンパレード"は久しぶりの事態だ。

 過去の伸び率と比べると、生鮮品を除く総合の2.6%上昇は消費増税という一時的要因のあった14年10月の2.6%以来、7年10カ月ぶり。だが、消費増税の影響を除くと、バブル崩壊直後の1992年前半の2.4~2.6%以来、約30年ぶりという水準になる。当時、物価は翌93年から2%台を割り込み、00年以降は下落基調が長年にわたって定着してきた。

 今後の動きも、予断を許さない。帝国データバンクが8月12~18日に実施した企業の値上げ動向の最新調査によると、今年4~6月に商品・サービスを値上げした企業は48.7%、7月に値上げした企業は10.6%あった。8月以降の向こう1年間の実績・予定では、10~12月の16.7%をピークに31.4%が予定しており、4月以降の実施済みも合わせると69.6%に上っている(再値上げなどの複数回答を含む)。

 業種では化学品メーカーや食品関連が多く、10~12月には「飲食料品卸売」を中心に値上げが進む見通しだ。また、今年になって2回以上値上げしている企業は25.8%に上っており、同社は「食品関連の川中産業で値上げを予定している企業が多く、これからは川下産業や家計への影響が懸念される」と予想。シンクタンクの多くは10~12月には上昇率が3%台に乗ると予想している。

sc220829.png 物価上昇の本格化に対して、では賃金の上昇はどうなるか。厚生労働省の毎月勤労統計調査によると、現金給与総額こそ昨年から今年にかけてプラスを続けているが、伸び率は1%台の月が多く、6月にやっと2%に乗せるという"低空飛行"ぶり。従って、物価上昇が本格化した4月以降は、物価上昇分を差し引いた実質賃金が4カ月連続のマイナスとなっている=グラフ

 連合の集計では今春闘の企業の賃上げ率は2.07%で4年ぶりに前年を上回ったものの、中小企業は2%に届かなかった企業が多く、物価上昇を上回るほどの伸び率にはなっていない。ただ、大企業を中心に夏冬のボーナスを増やしており、10月からは最低賃金も3.3%上がることから、今秋から年末にかけては物価と賃金の「3%のせめぎ合い」が繰り広げられる可能性はありそうだ。

ようやく官民で「人材投資」の流れ

 政府も官邸に「物価・賃金・生活総合対策本部」を設置して、ガソリン価格の上昇抑制、節電家庭へのポイント付与、農家に対する肥料価格の一部支援、政府による輸入小麦の売り渡し価格の据え置き、生活困窮者に対する現金支給など、さまざまな政策を打ち出している。しかし、...

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