今年の最低賃金(最賃)の審議が佳境に入っている。中央最低賃金審議会(藤村博之会長)は6月26日から、最賃の「目安」を決める小委員会で検討を始めた。7月下旬には目安を提示する予定だ。昨年、目安を大きく超える地方が続出したことについて、中央審は「法令に基づく引き上げ」を地方に求めたことなどから、今年は地方審がどう判断するか、対応が注目される。(報道局)
昨年、中央審は平均目安を過去最高の63円(6.0%増)引き上げて1118円とした。従来なら、地方審は目安と同額か1~2円程度の上乗せをして決着したが、昨年は様相が一変した。
熊本県が目安を18円上回る1034円に決めたのを最高に、大分県が17円増の1035円、秋田県が16円増の1031円、岩手県が15円増の1031円など、目安を大幅に上回る県が続出。さらに、発効日も10月のメドを大きく遅らせ、秋田県の翌3月31日をはじめ、群馬県の3月1日、福島県など4県が1月1日にズレ込ませる異例の事態となった。
実は、その1年前の24年度、徳島県が「人材の他県流出防止」を目的に、目安の50円増を34円も上回る84円に設定し、最賃を896円から980円に大きく引き上げた「徳島の乱」が大きな話題を呼んだ。1人あたりの県民所得などを参考にした、それなりの引き上げ額だったが、結果的に25年度の他県の"参考事例"になった。
一方、発効日の後ろ倒しは、「大幅引き上げに向けた準備期間が必要」という企業側の意向を受けてずれ込んだものだが、10月発効の県からは最大で半年の時間差が生じた。最賃法では、改定額の公示から30日後の発効を定めているが、発効日の引き延ばしを大幅引き上げ額との"取引材料"にすることは想定外であり、労働側から「引き上げ効果が半減する」との不満も多かった。
このため、中央審は6月23日、今年の論点整理を公表。「近隣県等との過度な競争意識や最下位回避の意識による、地域の実態と乖離した引き上げ」については、最賃法で定める地域の生計費、賃金、企業の支払い能力の「法定3要素」に基づいて決めるべきこと。「発効日」についても、同法で定める「公示の日から約30日」に従うべきであり、大幅引き上げの"取引条件"として使うべきではないこと。「地方審はこうした考え方を踏まえた審議を行い、発効日が遅れる場合は理由を説明する」ように求めた。
今回の論点整理は、中央審として地方審に"自重"を求める意向が色濃い内容となっている。ただ、「最下位回避競争」の背景には、地方の深刻な人手不足や近隣県へ容易に移動できる労働力の流動化など、最賃法では想定していなかった現実的な問題があり、都道府県単位の最賃の決め方も時代に合っているかどうか、再検討する必要が出てきていることも確かだ。
今年の最賃論議は、昨年のこうした事態を受けた議論となっているが、企業側が大幅賃上げによる"賃上げ疲れ"の様相を呈しているのに対して、労働側は「中東情勢を背景にしたインフレが最賃周辺の労働者に厳しい生活を強いている」として、昨年以上の引き上げを求めるなど、両者の主張には大きな開きがある。
国民の生活水準が上がったとは言えない。厚労省の毎月勤労統計調査によると、月々の賃金から物価上昇分を差し引いた実質賃金は2019年から21年を除く25年までの6年もの間、マイナスが続いた。24年から3年連続で5%台の大幅賃上げが実現したことから、26年になってようやくプラス転換し、1~5月の5カ月連続でプラスを維持している。
ジレンマ強まる中小企業
しかし、大幅賃上げを実現したのは大企業に限られ、中小企業は3~4%台で推移していることから、企業規模による格差は拡大しているのが実情だ。最賃周辺の賃金水準で働いている労働者は中小企業に多いことから、...
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