顧客による迷惑行為であるカスタマー・ハラスメント(カスハラ)と、求職者へのセクシャル・ハラスメント(セクハラ)の対策が、10月からすべての企業の完全義務となる。企業にとっては、さまざまな種類のハラスメント対策がまた加わることになるが、カスハラの場合は対応を誤ると離職をはじめ、経営に悪影響を及ぼす事態に直結しかねないことから、企業側の準備も急ピッチで進んでいる。(報道局)
カスハラ対策の義務化は、2025年に成立した改正労働施策総合推進法と指針に基づくもの。顧客らによる従業員への言動が、社会通念上の許容範囲を超え、従業員の就業環境に害を及ぼすことを指す。企業にとっては従来の努力義務から、完全義務に格上げされた格好だ。

厚生労働省は業種別の対策マニュアル
なども作成して周知している
具体的には、顧客らが商品・サービスと関係ない要求、または想定するサービスを著しく超える要求などを繰り返す行為。要求態度も暴行、障害、脅迫、中傷、暴言、侮辱などがカスハラに該当する。もちろん、土下座を要求したり、執拗に謝罪を求めたり、居座ったりすることも含まれる。
企業側は、これらの事態を防止する措置を講じなければならない。厚生労働省が作成したガイドラインによると、(1)企業方針の明確化と周知徹底(2)相談体制の整備(3)事後の迅速で適切な対応(4)実効性確保に必要なカスハラ防止措置――などが必要になる。
カスハラが他のハラスメントと最も大きく異なる点は、社外の顧客らが主な加害者である点だ。その性質上、小売り、サービス、医療・介護など、大半が日常的に外部の顧客に接する現場で発生する。しかし、これまでは顧客に「難題」を吹きかけられても、会社としての方針がなく、対応はもっぱら現場の従業員に任されてきたことから、従業員の精神的な負担が大きく、労災認定も増えるなど、制度的な対応が必要になった。
カスハラ問題については、これまで様々な調査結果が出ているが、マイナビが今年7月、アルバイト就業者約3000人を対象に実施した「カスハラ実態調査」によると、直近1年間にカスハラ被害に遭ったバイト就業者は4人に1人に上り、被害者の7割が「仕事へのやる気が下がった」と答えている。
具体的には、「大きな怒鳴り声をあげられた」「理不尽な要求を繰り返された」「人格否定・侮辱発言をされた」が多く、「居座りや長電話など、長時間拘束された」「性的冗談などのセクハラ」「SNSで悪質な口コミを広げられた」といった事例もあった。セクハラ被害は女性従事者の多い「医療・介護・保育」の職種に多いのが目立つ。
その結果、被害者の多くが「仕事へのやる気が低下」「精神的ストレス」「仕事を辞めたい」といった気持ちになっている。仕事へのモチベーションが下がり、従業員のメンタルヘルスの課題を抱えることから、企業にとっては離職など人材定着に問題を残す。人手不足にあえぐ多くの企業にとって、その影響は小さくない。
むずかしい「クレーム」と「カスハラ」の線引き
相手が顧客という社外の人物にどう対応するか。顧客のクレームには商品・サービスの不備など正当な内容もあり、それは消費者基本法によって規定されている。同法では消費者の権利として、「安全が確保される」「知らされる」「意見が反映される」など8項目の権利が保障されている。
全国に先駆け、25年に「カスハラ防止条例」を策定した東京都は昨年10月、大規模な企業調査を実施した。その結果...
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