ニュース記事一覧へ

2021年11月 6日

難病患者らの法定雇用率算入など議論 企業側の周知はわずか、難病フォーラム

 難病患者や慢性疾患の人たちが企業などで働く場合、6割ほどの職場では疾病に対する理解は進んでいるものの、相談や支援体制ではもっぱら「上司」からが多く、産業医やカウンセラーなどの専門家が少ないことがわかった。日本難病・疾病団体協議会が中心となって6日に開いた難病・慢性疾患全国フォーラム2021で、支援団体のNPO法人「ASrid」(西村由希子理事長)が発表した調査で明らかになった。

 調査は9~10月に実施し、18歳以上の難病患者、長期慢性疾患患者185人から回答を得た。64%が女性で、58%が障害者手帳を取得している。

 疾病に対する職場の理解は「上司」が66%、「同僚」が64%、「職場全体」が57%にのぼった。しかし、相談・支援体制では、最も多いのは「上司」の44%で、「社内窓口」が26%で続いた。しかし、「産業医」は17%、「産業保健部・カウンセラー」は16%しかなく、そもそも産業医は42%、カウンセラーは48%がいなかった。難病に対する社会の理解が進んでいないことを示す結果となった。

 同時に行われたパネルディスカッションには厚生労働省の小野寺徳子・雇用対策課長▽高齢・障害・求職者雇用支援機構の春名由一郎・副統括研究員▽産業医の平岡晃氏▽同協議会の吉川祐一・代表理事の4人が参加。難病患者の法定雇用率算入問題などについて議論した。

 吉川氏は「障害者手帳という"武器"がないと、支援団体なども就労支援がしにくいという声がある。積極的な支援策を望みたい」と要望。これに対して、小野寺氏は「法定雇用率の対象になれば、企業のインセンティブが働くことは考えられるが、雇用率達成だけを目的にした数合わせになる懸念もある。障害者各人の"持っている力"を重視した就労が重要」と述べた。

 春名氏は「難病患者の3割ほどは今も問題なく働いており、職場のちょっとした配慮で就労を維持できる患者は多い。企業側に疾病の特性などを理解してもらう政策が必要」と課題提起。平井氏は「近年、"健康経営"が企業活動のキーワードになっており、仕事と疾病の両立支援策が必要になる」と述べた。

 難病患者の法定雇用率算入については、労政審の障害者雇用分科会で議論が始まっているが、障害者手帳の取得が前提条件となっている現行制度下では、手帳を取得できない難病患者らにとっては不利な状況が続いていた。


【関連記事】
A型事業所、就労支援など5団体
障害者雇用分科会がヒアリング(10月12日)

PAGETOP